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府医ニュース
2025年6月25日 第3112号
令和7年度(日本医師会)都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会が5月23日に日医会館小講堂にて、ウェブ会議併用で開催された。当日は、各都道府県医師会役員をはじめ、日医役員、日医勤務医委員会委員など91人が参加した。
冒頭、6年度の全国医師会勤務医部会連絡協議会の開催を担当した福岡県医師会の戸次鎮史常任理事より開催報告、続いて7年度の同協議会の開催を担当する岩手県医師会の宮田剛常任理事より、開催要領の紹介がなされるとともに多数の参加が呼びかけられた。なお、8年度の同協議会については大分県医師会の担当により開催を予定していることが確認された。
協議では、まず「医師偏在対策について」と題し、今村英仁・日医常任理事が講演。今村氏は、昨年度、厚生労働大臣が各都道府県知事と協議した結果、医師偏在対策を国として本格的に進めることが決定したことを振り返り、12月25日に『医師偏在是正に向けた総合的対策パッケージ』が公表されたと説明した。パッケージには、①若手からシニアまで全世代を対象とした施策、②重点医師偏在対策支援区域の設定、③偏在指数を「参考値」と位置付け、自治体判断を促す運用、④管理者要件を公的病院等に限定、⑤自由開業を堅持しつつ外来多数区域での新規開業要件を整備、⑥保険医療機関管理者に臨床研修終了後3年間の勤務を要件化、⑦約1000億円規模の経済的インセンティブ基金創設検討、⑧6年度補正予算でマッチング機能を先行実施、⑨リカレント教育支援および都道府県と大学病院連携協定の推進――などが掲げられている。日医はこれに対して、「国民皆保険制度およびフリーアクセスの堅持」を最重要課題に据え、「医師のプロフェッショナル・オートノミーの尊重」を改めて要請するとともに、松本吉郎・日医会長は「単一の仕組みでは偏在は是正できない」と述べ、複合的かつ継続的な支援体制の強化を要求しているとした。また、昨年度の予算要望活動では、新型コロナウイルス感染症の教訓を踏まえた平時からの余裕確保の必要性を訴え、1000億円規模の経済的インセンティブ基金創設を強く主張。さらに、「医師の全国的なマッチング機能」について日医が受託したことを報告。同機能については各都道府県医師会との密なコミュニケーションが必要であるとし、協力を呼びかけた。今後は「診療科偏在の是正」「高齢者・外国人対応の強化」「地域医療構想の深化」を課題と位置付け、地域完結型医療への移行と有事対応力のさらなる向上を目指すと結んだ。
引き続き、「医師会と大学との協働について」をテーマに、猪股雅史・大分大学医学部医師会長が講演。猪股氏はまず、大分県は少子高齢化の進行度が全国平均を上回る〝日本の縮図〟であることを指摘し、20年前から医師不足・偏在が深刻な課題として存在していたと述べた。そこで平成22年、大分大学は県および自治体と連携して地域医療枠制度を導入するとともに、外科・内科の教授各1人を含む約8人体制の地域医療学センターを設立し、若手医師の地域定着を図っている。30年には、医学部医師会を発足させ、当初の293人から353人へと会員数が拡大。研修医・学生向けの医療制度教育や学術論文支援、県医学会雑誌の復刊に加え、地域実習、高校生向け連携セミナーなど多彩なプログラムを展開している。また、自治体と医師会が共同設置する「内科医療人材育成事業」により、過去7年間で41人の専攻医を地域拠点病院へ派遣。さらに遠隔手術指導や特定看護師研修、病診連携セミナーなどの新たな取り組みも進行中であり、今後は大学・医師会・自治体の三位一体連携によって、地域・診療科偏在のさらなる解消、高齢医師のリカレント教育、働き方改革の一層の推進が重要とまとめた。講演終了後には質疑応答が行われ、活発な議論が展開された。
府医勤務医部会副部会長 杉本 圭相(府医理事)