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医師・医療関係者のみなさまへ

「ダイヤモンド・プリンセス号対応記録」

府医ニュース

2025年6月25日 第3112号

国立健康危機管理研究機構 厚生労働省 DMAT事務局 鈴木 教久氏(業務調整員)

 本部では、患者の需要と医療チームや物資の供給資源のバランスを取り対応方針を協議・決定する。業務調整員は、▽通信手段の確立▽医療資機材の確保▽医療機関と調整▽生活環境(宿泊・移動・食事)の整備――が主たる任務だ。

不安を与える存在に?

 鈴木氏は、生活環境の整備を中心に業務を解説した。クルーズ船関係者であることが明るみになることによる弊害を説示。ホテル生活中は宿泊拒否にあわないよう、「活動服で行動しない」「『先生』と呼ばない」など工夫したが、これまでは安心を与えてきた自分達が、不安を与える存在になったのかと当時の心境も語った。

奮闘 乗客に寄り添う

 後半は感慨深いエピソードを披露。患者搬送時には、患者をメディアから守るためビニールシートが張られており、一人ずつしか降ろせない状況だった。▽乗客の下船準備の状況▽狭い通路▽エレベーターの混雑――による混乱から関係者間で大喧嘩もした。
 そんな中、ある乗客が危篤の夫に会いたいがために飛び降りると叫んでいる。なんとか下船許可が下りたが、当人は陽性ではない。鈴木氏は、下船時に自身の顔をマスコミに晒すリスクを厭わず「優先させたい乗客がいる」と大喧嘩した担当者に頼みに行ったところ、「おまえの好きなタイミングで降ろせ」と回答され、感極まって涙したと明かした。
 最後に、20日間の制限された生活の中で心がすさんでいったが、船内クルーのプロフェッショナルさに胸を打たれ、自身の心が保たれたと強調。陽性の乗客にも変わりなく接するクルーの高い意識により、自身も活動が全うできたと称賛した。