TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

「DMATとダイヤモンド・プリンセス号対応」

府医ニュース

2025年6月25日 第3112号

国立健康危機管理研究機構 厚生労働省 DMAT事務局 松田 宏樹氏(医師)

 冒頭、日本DMAT活動要領を紹介。DMATは、「大地震および航空機、列車事故等の災害時」に被災地に駆けつけるとされ、感染症の明記はなく、ダイヤモンド・プリンセス号への出動が任務に含まれるのか相当揺らいだと振り返った。

船内の状況――災害なのか?

 まず、平時の救急医療と有事の災害医療における緊急対応の違いを解説。有事では、膨大な被災者数に対して医療資源が圧倒的に少ないことによる対応能力の低下が根本的な課題だとした。そして、当時船内で起きていた状況が「災害」なのか、映画を観て考えてほしいと呼びかけた。

隊員派遣元の医療機関 手上げ激減の理由は?

 DMAT活動の前半は、▽活動方針の策定▽感染防護策の策定▽DMAT派遣調整――に追われた。松田氏は、隊員に感染が確認された際には、派遣元医療機関の手上げが著しく減ったと言及。手上げが激減したもう一つの理由は、劇中で確認してほしいとした。
 後半は、データ分析や全国の行政機関・派遣元病院への情報提供のほか、医療搬送も行った。松田氏は、隊員の心理的負担を憂慮し、派遣後の健康管理の大切さを訴えた。船内隔離開始後、1週間程度で新規の熱発患者数が低減してきた際には、「戦に勝った」意識だったと言明。厚生労働省幹部には、超法規的判断も必要な中、体を張った対応だったと謝意を示した。
 最後に、ドイツの元首相・ビスマルクの言葉「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」を引用。自分の経験だけでは限界があるとし、先人達の様々な歴史から学ぶことの重要性を説き締めくくった。