
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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府医ニュース
2025年6月25日 第3112号
1,300超の応募から当選した府民約300人が来館した。当日は、映画上映に先立ち、実際に支援活動に従事した2人のDMAT隊員が講演。映画の世界観がよりリアルなものとなった。
大阪府医師会は5月10日午後、府医会館で、映画「フロントライン」特別上映会を実施した。本作は、令和2年2月に発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での新型コロナウイルス感染症の集団感染において、フロントライン――最前線で医療支援を行ったDMAT(Disaster Medical Assistance Team/災害派遣医療チーム)の奮闘を、事実に基づいて描いている。
大平真司理事の司会で開会し、加納康至会長があいさつ。DMAT隊員が、前例のない感染症との闘いで抱いた葛藤に思いを馳せ、その活動を称えた。また、当時の社会情勢を回顧。国民一人ひとりの努力により脅威を乗り越えたとし、上映会開催の喜びを語った。釜萢敏・日本医師会副会長はビデオメッセージで、今後の新興感染症に備え、引き続き体制整備に努めたいと力を込めた。上映会に先立ち、最前線で従事したDMAT隊員が当時の現場の様子を講演。実際の活動状況や映画では描かれなかった裏側を伝えた。
冒頭、日本DMAT活動要領を紹介。DMATは、「大地震および航空機、列車事故等の災害時」に被災地に駆けつけるとされ、感染症の明記はなく、ダイヤモンド・プリンセス号への出動が任務に含まれるのか相当揺らいだと振り返った。
まず、平時の救急医療と有事の災害医療における緊急対応の違いを解説。有事では、膨大な被災者数に対して医療資源が圧倒的に少ないことによる対応能力の低下が根本的な課題だとした。そして、当時船内で起きていた状況が「災害」なのか、映画を観て考えてほしいと呼びかけた。
DMAT活動の前半は、▽活動方針の策定▽感染防護策の策定▽DMAT派遣調整――に追われた。松田氏は、隊員に感染が確認された際には、派遣元医療機関の手上げが著しく減ったと言及。手上げが激減したもう一つの理由は、劇中で確認してほしいとした。
後半は、データ分析や全国の行政機関・派遣元病院への情報提供のほか、医療搬送も行った。松田氏は、隊員の心理的負担を憂慮し、派遣後の健康管理の大切さを訴えた。船内隔離開始後、1週間程度で新規の熱発患者数が低減してきた際には、「戦に勝った」意識だったと言明。厚生労働省幹部には、超法規的判断も必要な中、体を張った対応だったと謝意を示した。
最後に、ドイツの元首相・ビスマルクの言葉「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」を引用。自分の経験だけでは限界があるとし、先人達の様々な歴史から学ぶことの重要性を説き締めくくった。
本部では、患者の需要と医療チームや物資の供給資源のバランスを取り対応方針を協議・決定する。業務調整員は、▽通信手段の確立▽医療資機材の確保▽医療機関と調整▽生活環境(宿泊・移動・食事)の整備――が主たる任務だ。
鈴木氏は、生活環境の整備を中心に業務を解説した。クルーズ船関係者であることが明るみになることによる弊害を説示。ホテル生活中は宿泊拒否にあわないよう、「活動服で行動しない」「『先生』と呼ばない」など工夫したが、これまでは安心を与えてきた自分達が、不安を与える存在になったのかと当時の心境も語った。
後半は感慨深いエピソードを披露。患者搬送時には、患者をメディアから守るためビニールシートが張られており、一人ずつしか降ろせない状況だった。▽乗客の下船準備の状況▽狭い通路▽エレベーターの混雑――による混乱から関係者間で大喧嘩もした。
そんな中、ある乗客が危篤の夫に会いたいがために飛び降りると叫んでいる。なんとか下船許可が下りたが、当人は陽性ではない。鈴木氏は、下船時に自身の顔をマスコミに晒すリスクを厭わず「優先させたい乗客がいる」と大喧嘩した担当者に頼みに行ったところ、「おまえの好きなタイミングで降ろせ」と回答され、感極まって涙したと明かした。
最後に、20日間の制限された生活の中で心がすさんでいったが、船内クルーのプロフェッショナルさに胸を打たれ、自身の心が保たれたと強調。陽性の乗客にも変わりなく接するクルーの高い意識により、自身も活動が全うできたと称賛した。
未知のウイルスに最前線で立ち向かったのは、我々と同じ日常を持ちながらも、眼の前の「命」を救うことを最優先にした人々だった。
船外から全体を指揮するDMAT指揮官・結城(小栗旬)と厚生労働省の立松(松坂桃李)、船内に乗り込んだ医師の仙道(窪塚洋介)と真田(池松壮亮)、羽鳥(森七菜)をはじめとした船内クルーと乗客達。
TV局の記者・上野(桜井ユキ)らマスコミの過熱報道が世論を煽る中、明日さえわからない絶望の船内で、彼らは誰一人としてあきらめなかった。全員が下船し、かけがえのない日常を取り戻すために――。