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〝プレコン〟

府医ニュース

2025年6月4日 第3110号

こども家庭庁が推進5か年計画を公表

 5月22日、こども家庭庁「プレコンセプションケアの提供のあり方に関する検討会」から、最終報告「プレコンセプションケア推進5か年計画~性と健康に関する正しい知識の普及と相談支援の充実に向けて~」が公表された。
 プレコンセプションケアは、直訳すれば受胎・懐妊前ケアとなる。2012年にWHOが「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義し、日本では18年以降、政府の方針に組み込まれるようになった。背景には、若い女性のやせと肥満の増加、出産年齢の高齢化などによる高リスク妊娠の増加が挙げられている。さらには予期せぬ妊娠の場合、妊産婦の自殺や児童虐待に至る可能性も指摘されている。
 元来は、周産期死亡率の低下や新生児予後の改善を目的とした、健康な妊娠・出産を目指す妊娠前のケアとの概念であったが、現在では「性別を問わず、適切な時期に、性や健康に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行う」概念に拡張されている。一般向けに〝プレコン〟と略されることもある。
 国立成育医療研究センターによる啓発資料「プレコンノート」では、5つのActionとして、①自分のからだとこころを知る(生物学的な男女の違い、多様性、適正体重など)、②生活を整える(栄養、危険ドラッグ、喫煙、飲酒など)、③自分の体をチェックしよりよくする(ワクチン、生活習慣病など)、④かかりつけ医とつながる(月経、避妊、持病など)、⑤ライフプランを立てる──を示し、「人生100年時代を生きるために」としている。
 大阪府においては、23年4月に「おおさか不妊専門相談センター」を「おおさか性と健康の相談センター」に名称変更して事業を拡充、6月にはチャット相談「カラダと性の相談室」を開設、府ホームページでプレコンセプションケア外来を持つ府内医療機関の情報を掲載するとともに、今年3月には特設サイトがオープンしている(https://caran-coron-precon.jp)。
 今回取りまとめられた推進5か年計画では、糖尿病、高血圧、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群など、基礎疾患を持つ女性に向けた専門的な相談支援や連携体制の強化が謳われている。また、自治体・企業・教育機関等において、性別を問わず、正しい知識の普及を図り、健康管理を促す「プレコンサポーター」の人材育成を行うとしている。
 そして、5年後の数値目標として、▽若い世代における概念の認知度:80%(現在1割以下)▽プレコンサポーターの人数:5万人以上▽自治体での相談センター事業の実施率:100%(現在約70%)▽企業における取り組みの実施率:80%(現在約30%)▽若い世代における一般的な相談窓口の認知度:100%▽専門的相談ができる医療機関数:200以上(現在約60機関)──を設定した。
 若い世代への情報発信の工夫として、SNSを含め、流行を適宜取り入れることや、「今を見つめる、いつか思う〝たいせつ〟のために」など短い補足の付加も提案している。HPVワクチンのキャッチアップ接種の際の経験や教訓を生かしたいものである。(学)