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医師・医療関係者のみなさまへ

感染症発生動向調査委員会

府医ニュース

2025年6月4日 第3110号

2024(令和6)年 感染症の動向

大阪府・大阪市・堺市・東大阪市・高槻市・
豊中市・枚方市・八尾市・寝屋川市・吹田市

 感染症発生動向調査事業は医師会、大阪府、大阪市、堺市、東大阪市、高槻市、豊中市、枚方市、八尾市・寝屋川市・吹田市の密接な連携の下に実施されている。大阪府感染症情報解析委員会は毎週水曜日に開催され、定点の先生方からの毎週の患者情報と、大阪健康安全基盤研究所、堺市衛生研究所の病原体検出情報とをあわせて解析・評価し、還元している。2024年の感染症発生動向調査結果の概要を報告する。

はじめに

 2024年第52週時点の大阪府の小児科定点は196、インフルエンザ定点は305、眼科定点は52、基幹病院定点は18であり、前年とほぼ同様である。小児科・眼科定点疾患の1年間の患者報告数の総計は129,759人で前年より16.0%増加した。インフルエンザを除く疾患別では感染性胃腸炎が1位であり、次いで手足口病、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱の順である。第6位以下は、ヘルパンギーナ、突発性発しん、水痘、流行性角結膜炎、流行性耳下腺炎、伝染性紅斑、急性出血性結膜炎であった。上位5疾患はそれぞれ全体の34.8%、25.9%、20.2%、8.4%、3.4%で5疾患の合計が全体の92.7%を占めた。

感染性胃腸炎

 第1位の感染性胃腸炎の患者報告数は45,102人で、前年に比し0.3%増加し、定点あたり報告数は4.41であった。年齢別では1歳で5,893人(13.1%)と最も多く、2歳が4,821人(10.7%)、3歳が4,249人(9.4%)、4歳が3,961人(8.8%)の順であり、1~4歳までで全体の42.0%を占めた。季節別では春期(3月~5月)に29.1%、夏期(6月~8月)に20.0%、秋期(9月~11月)に17.7%、冬期(12月~2月)に22.3%と春期と冬期に多かった。週別定点あたり報告数では第5週(8.31)にピークがあった。検出されたウイルスは、ノロウイルスが50株、サポウイルスが7株、ロタウイルスが7株、アストロウイルスが3株、ライノウイルスが1株であった。基幹定点医療機関からの届出でロタウイルス感染性胃腸炎の報告数は49人であった。

手足口病

 第2位の手足口病は33,632人で、前年に比し10倍になり、定点あたり3.29であった。年齢別では1歳が9,297人(27.6%)で最も多く、2歳が6,015人(17.9%)、3歳が4,450人(13.2%)、4歳が3,811人(11.3%)、5歳が2,836人(8.4%)、6~12カ月未満が2,626人(7.8%)と続き、6カ月~5歳までで、全体の86.3%を占めた。季節別では春期に12.8%、夏期に50.9%、秋期に32.2%、冬期に4.1%であり、夏期に多い。週別定点あたり報告数では第28週(9.93)、第41週(6.45)にピークがあった。検出されたウイルスは、コクサッキーA6が30株、コクサッキーA16が12株、コクサッキーA10が2株、ライノウイルスが7株、エンテロウイルス71が6株、ヒトメタニューモウイルスが2株、その他が3株であった。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

 第3位のA群溶血性レンサ球菌咽頭炎は26,204人で、前年に比し23.3%増加し、定点あたり2.56であった。年齢別では5歳が3,217人(12.3%)で最も多く、4歳が3,082人(11.8%)、6歳が3,040人(11.6%)、7歳が2,576人(9.8%)と続き、4~7歳までで全体の45.5%を占めた。季節別では春期に32.4%、夏期に24.8%、秋期に15.7%、冬期に27.1%であり、春期に多かった。週別定点あたり報告数では第6週(4.30)と第20週(4.59)にピークがあった。

RSウイルス感染症

 第4位のRSウイルス感染症は10,872人で、前年に比し4.0%増加し、定点あたり報告数は1.06であった。年齢別では1歳が3,525人(32.4%)で最も多く、6~12カ月未満が2,001人(18.4%)、2歳が1,971人(18.1%)、0~6カ月未満が1,415人(13.0%)、3歳が943人(8.7%)、4歳が426人(3.9%)の順であった。0~2歳までで全体の82.0%を占め、3~4歳が12.6%であった。新型コロナウイルス感染症流行前の2019年までは0~2歳で毎年85%以上を占めており、2020年にRSウイルスの流行がなかった影響が2021年~2023年に引き続き、罹患年齢に反映されている。季節別では春期に54.7%、夏期に17.7%、秋期に14.8%、冬期に12.9%であり、春期に多かった。週別定点あたり報告数では、第16週(4.41)にピークがあった。

咽頭結膜熱

 第5位の咽頭結膜熱の患者報告数は4,428人で、前年に比し72.5%減少し、定点あたり報告数は0.43であった。年齢別では1歳で1,235人(27.9%)と最も多く、2歳が692人(15.6%)、3歳が507人(11.4%)、4歳が423人(9.6%)、5歳が379人(8.6%)の順であり、1~5歳までで全体の73.1%を占めた。春期に26.7%、夏期に29.6%、秋期に14.5%、冬期に29.2%と夏期と冬期に多かった。週別定点あたり報告数では第2週(0.89)、第24週(0.91)に小さなピークがあった。検出されたウイルスは、アデノウイルス2型が5株、アデノウイルス3型が3株、アデノウイルス1型が1株、アデノウイルス54型が1株、ヒトメタニューモウイルスが1株であった。

インフルエンザ

 インフルエンザの患者報告数は111,620人で前年に比し13.1%減少し、定点あたり7.02であった。年齢別では10~14歳が25,252人(22.6%)と最も多く、20歳以上が25,049人(22.4%)、8歳が7,462人(6.7%)、7歳が7,138人(6.4%)と続いた。週別定点あたり報告数では、2023年第33週(1.10)から流行期に入り、第6週(29.79)でピークとなり、第17週(0.74)で収束した。その後第46週(1.97)から流行期に入り、第51週(45.86)から急激に増加し、第52週(67.86)にピークとなった。インフルエンザウイルスの検出はAH1pdmが165株、AH3が39株、B(Victoria)が122株であった。

新型コロナウイルス感染症

 新型コロナウイルス感染症の患者報告数は68,578人で、定点あたり報告数は4.31であった。年齢別では20歳以上が45,672人(66.5%)と最も多く、10~14歳が5,798人(8.5%)、15~19歳が3,455人(5.0%)、1歳が2,387人(3.5%)の順であり、成人の占める割合が高かった。春期に16.9%、夏期に41.3%、秋期に9.9%、冬期に31.8%と夏期と冬期に多かった。週別定点あたり報告数では第5週(9.36)、第30週(14.68)にピークがあった。

おわりに

 1982(昭和57)年に感染症発生動向調査事業を開始して42年が経過しました。この間、関係各位のご理解・ご支援により、貴重な調査結果が集積されています。これらの調査結果の解析や発信が医療や感染症対策に資し、府民の健康・安心・安全に寄与しています。2025年もご理解・ご支援の程よろしくお願いいたします。 報告 東野 博彦(河内医師会)