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時の話題
府医ニュース
2025年5月28日 第3109号
令和5年度のこども家庭庁の調査では、インターネット利用は0歳から始まり、8歳以上では9割が使用している。高校生の30%近くがスマートフォンを1日5時間以上使用し、その中にゲーム行動症と診断される依存状態がある。依存者の半数近くが長期にわたり学校に行けず、35万人ともいわれる小・中学校の不登校者の原因の一つになっている。ゲーム依存になる人の環境要因の一つとして、幼少期からの不十分な愛着形成があり、学校での孤立感に対してネット内の友人関係やゲームへの逃避に癒しを求める傾向にある。
依存の予防にはネット・ゲーム使用のルール決めが必要不可決だが、保護者・本人双方の相談の下、トライ&エラーで進め、保護者による実践見本が求められる。対応に重要なのは依存に至った理由と、そこから抜け出す自分なりの方法を見つけ出す過程である。一人ひとりが自分でできることを保護者や、医療者、カウンセラーと相談し、試行錯誤する過程は子どもの自立のチャンスだと前向きに捉えてほしい。依存症や不登校者の増加は、コロナ禍で十分な準備のないまま教育のICT化が進められたことも一因である。依存は確実に増加し若年化している。デジタル化が進めばリアルな人間関係が薄れ、コミュニケーション能力も低下してしまう。
内閣府、文部科学省、厚生労働省も、ICT化のデメリットは幼児期の利用の仕方に多く見られると警鐘を鳴らしている。可能な限り接触時間を減らし、家庭でのリアルな会話や実体験を積み重ねて情操を育むことが重要となる。スマートフォンなどを至近距離で連続視聴することは、視力低下、難聴、運動機能不全、筋力低下を来す。また、生活リズムの乱れは良質な睡眠を脅かし、脳の健やかな発達に悪影響を及ぼす。元来子どもは好奇心の塊で、経験値の低さから思わぬ行動をとる。さらに感情のコントロールが困難で、所かまわずエネルギーを発散させる。保護者としては、子どもをおとなしくさせるために仕方なく動画を見せることもある。子どもの声を騒音とする住民の意見で、公園や公共の場所が閉鎖され、戸外に安全な遊び場がない中、子育てしやすい環境整備を後回しにして、子ども達からゲームやSNSを取り上げても解決にはならない。ICT先進国のSNS対応に学びつつ、日本独自の取り組みが求められている。
ゲームやSNSなどのツールを子ども達に手渡したのは私達大人であることを自覚すべきだ。子ども達は発達途上にあり、SNS、ネット依存を乗り越えることは子ども達の自立につながることを信じたい。
そして私は大丈夫と思っているあなた、ポケットの手はいつもスマホを触っていませんか!?