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医師・医療関係者のみなさまへ

第36回布施緩和ケア研修会

府医ニュース

2025年5月28日 第3109号

緩和ケア×発達障害×地域連携

 布施医師会(平松久典会長)は3月1日夕刻、第36回となる「布施緩和ケア研修会」をウェブで開催。今回は「緩和ケア×発達障害×地域連携」をテーマに掲げ、医療・介護関係者ら約150人が参加した。
 当日は、川邉正和氏(同医師会理事)と福村雄一氏(東大阪プロジェクト代表/司法書士)が司会進行を務めた。冒頭、川口俊氏(同医師会副会長)があいさつ。日々の診療だけでは考え方が偏りがちになり、「知らないうちに患者やその家族を傷つけてしまうこともある」と言及。本研修会は「気付き」に導いてくれるとし、その意義を語った。
 次いで、松岡太郎氏(前豊中市保健所長)が、「ある小児科医が見た『発達障害』」と題して講演した。冒頭で夏目漱石の『坊つちやん』を紹介。主人公に見られる「発達障害」的な部分を引き合いに、住み込みで働いていた女性の対応が秀逸で参考になるとの見方を示した。
 発達障害は先天的要因が大きい。松岡氏は、早期の気付きと配慮や支援によって「生きづらさ」を最小限に留めることが大事だと説いた。成長につれて自尊心が低下し、二次障害が大きくなるのを周囲の接し方で緩和することが重要だと加えた。
 発達障害の主な型として▽自閉スペクトラム症(ASD)▽注意欠如・多動症(ADHD)▽学習障害(LD)――を挙げる一方、「実際は合併例の方が多い」と強調した。あわせて、それぞれの特徴や症状を解説。自身の経験を交えながら医療現場で予想される対応を説明した。
 発達障害の方には感覚過敏・鈍麻、不安やこだわりが強く、また話し言葉が聞き取れないなどが見られると説示。耳からの情報が入りにくい場合にはメモを使用し、「ちょっと」「その辺」などあいまいな言葉は用いず、具体的に伝えるなどの対応を呼びかけた。
 最後に、「発達障害はその人の一部に過ぎない」と力説。人格を含め「たくさんの部分がある」とし、自尊心を高める向き合い方を促した。