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医師・医療関係者のみなさまへ

第37回医療情報に関する講演会

府医ニュース

2025年5月28日 第3109号

緊急時の医療情報伝達

 大阪府医師会は3月13日午後、「第37回医療情報に関する講演会」を府医会館で開催。ウェブとの併用で、医療従事者ら約120人が災害医療と医療DXに理解を深めた。

ダイヤモンド・プリンセス号の対応踏まえ医療機関情報システムが全国展開へ

 清水智之理事が司会を務め、加納康至会長があいさつ。自然災害の多い我が国では、医療の位置付けが重要になると指摘。今回のテーマである「『災害時医療』と『医療DX』のこれから」について理解を深めてほしいと期待を寄せた。
 篠永安秀氏(府医医療情報委員会委員長)が座長を務め、5人の講師が講演を行った。
 はじめに、畑中洋亮氏(あなたの医療代表理事〈厚生労働省医政局参与〉)が、「政府が進める災害医療DXの現在と未来への展望――G―MIS誕生とEMIS刷新を踏まえて」をテーマに登壇した。ダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルス感染症対応を引き合いに、神奈川県での緊急時医療体制を解説。医療機関の状況を明らかにして、医療崩壊や県民の混乱を防いだ「全病院調査基盤」は、その後、医療機関情報システム「G―MIS」として全国展開したと述べた。
 また、DMATからの被災報告や活動状況が分かる広域災害・救急医療システム「EMIS」は、「新EMIS(EMIS代替サービス)」としてより効率的に使用できるよう改良されたと強調。畑中氏は、平時から情報を蓄積することで、迅速な有事対応を可能にするとの見解を示した。G―MISとは異なり、平時には使用していない新EMISについて、「救急隊と医療機関をつなぐ基盤への拡張を検討中だ」と加えた。
 次いで、瀬藤茉仁子氏(大阪府福祉部福祉総務課企画グループ)が「災害時情報共有システム」を、濵直樹氏(大阪市健康局総務部総務課担当係長)が「iisumi(イイスミ)」として災害を想定したシステムを報告した。

独自のシステムが地域連携の基盤に

 続いて、久保田泰弘・浪速区医師会長が、「ブルーカードシステムについて」と題して講演した。同医師会では「データを伝える」ことを重視し、対象や内容に合わせてアナログとデジタルを使い分けていると前置き。電子カルテを介さず医療情報が共有できる「ブルーカード」を紹介した。同区内の病院が連携しており、患者の急変時にかかりつけ病院以外でも速やかな対応が可能と説明した。
 さらに、在宅医療における多職種間の連携ツールとして、「Aケアカード」を運用し、地域の医療介護連携基盤になっていると評した。Aケアカードのメリットとして、▽患者の医療情報閲覧・共有▽多職種間のリアルタイム連携▽病診連携機能――を列挙。「国のシステムが無くても、苦労を重ねれば地域連携が可能だと実感した」と語った。

医療DX最新の話題

 最後に、上野智明氏(日本医師会ORCA管理機構株式会社取締役副社長)が、「時事トピック――医療DXについて」をテーマに講演。全国医療情報プラットフォームの構築の3本柱である、▽全国医療情報プラットフォームの創設▽電子カルテ情報の標準化など▽診療報酬改定DX――の話題を中心に、医療DXを巡る最新情報を伝えた。