拡大鏡

　◆ローマ神話に、ローマを建国する双子の兄弟、ロムルスとレムスが登場する。双子は王位の権力争いから、生まれて間もなくテヴェレ川に捨てられるが、川岸に流れ着いたところに雌狼が現れ双子に乳を与え育てる。その後、羊飼い夫婦に引き取られ成人となる。
　◆米国のバイオ企業がゲノム編集技術を使い、１万２千年前に絶滅したダイアウルフを誕生させた。ダイアウルフの化石からDNAを抽出し、現存するハイイロオオカミの細胞にダイアウルフの遺伝子の一部を組み入れ作成した。その２匹にロムルス、レムスと名付けた。
　◆神話を現実化させたような業績の自負が見て取れる。確かに絶滅種の復活に浪漫を感じないわけではないが、本質は完全なダイアウルフではなく、単にハイイロオオカミのゲノム編集生物と懐疑的にみる専門家が多い。この怪しいビジネスの生命倫理や自然界に入り込む遺伝子汚染について議論を呼ばないのが不思議な気もする。
　◆改めてゲノム編集の危険性の認識と道義的な使用目的の再確認、ルール作りが急がれる。（誠）