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HIV地域医療連携研修会

府医ニュース

2025年5月21日 第3108号

HIV感染症の新たな課題を解説

 大阪府医師会は2月7日午後、令和6年度「HIV地域医療連携研修会」を府医会館とウェブの併用で開催。本研修会は大阪府からの委託により毎年実施しており、今回は約60人が聴講した。

 福島若葉氏(府医感染症対策・予防接種問題検討委員会副委員長)が座長を務め、はじめに笠原幹司理事があいさつ。HIV感染症に対する社会的関心の低下を懸念し、感染拡大の防止における若年層を中心とした正しい知識の普及・啓発の必要性を指摘。本研修会がHIV対策の円滑な推進、医療環境の整備の一助になればと期待を寄せた。
 次いで、白阪琢磨氏(同委員会委員長、大阪医療センターHIV/AIDS先端医療開発センター特別顧問)が、「HIV感染症で期待される病診連携と新たな課題」と題して講演した。HIV感染症の治療は進歩し、服薬を継続すれば、「死なない、うつらない病気」になったと強調。適切な治療によって体内のウイルス量が検出限界値未満に抑えられていれば、性行為でもうつらないことを表す「U=U」(Undetectable=Untransmittable)を概説した。また、HIV感染症/エイズの診断と抗HIV療法について解説。治療成功のカギは厳密な服薬管理と長期持続だと伝えた。
 一方で、依然としてHIV陽性者の人権上の課題は根深いとし、医療現場や福祉などの受け入れ側にあるハードルを問題視。今ではHIV陽性者の平均余命が非感染者と同程度となったことで、▽外来通院患者数の増加▽生活習慣病・悪性腫瘍・精神疾患等の診療ニーズの上昇▽患者の高齢化――といった新たな課題も出てきているとした。さらに、中核拠点病院を中心とする医療体制やエイズ予防指針などのエイズ対策にも言及。今後は病診連携により、長期療養に向けた医療・ケアおよび地域医療支援体制の確立を目指すとともに、市民への啓発、若手スタッフの育成にも注力し課題解決に向けて取り組む必要があると結んだ。