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医師・医療関係者のみなさまへ

令和6年度 緩和医療に関する研修会(シリーズ⑮)

府医ニュース

2025年4月30日 第3106号

緩和ケアをテーマに3題を講演

 大阪府医師会は令和6年12月14日午後、「6年度緩和医療に関する研修会(シリーズ⑮)」を府医会館で開催した。ウェブとの併用で、医師や看護師ら約140人が受講した。

在宅での緩和医療提供体制の充実に向けて

 冒頭、大平真司理事があいさつ。日本人の死因第1位のがん患者とその家族が、住み慣れた地域で自分らしく生活できるよう、在宅医療における緩和医療・ケア提供体制の一層の充実が求められており、本研修会がその一助になればと期待を寄せた。
 はじめに滝本佳予氏(市立豊中病院麻酔科/緩和ケアチーム医長)が、「緩和医療と神経ブロック」と題して講演した。まず、がんと痛みの関係性について概説。進行がん患者の6~7割は痛みを感じており、治療に伴う痛みも少なくないと解説した。オピオイドなどの鎮痛薬は、疼痛抑制効果は認められるが副作用の負担もあると指摘。経口鎮痛薬だけでは限界があり、「皮下注射や緩和的放射線治療・神経ブロックなども検討してほしい」と語った。また、注射剤は内服と比べて、少量で効果が大きいと加えた。
 次いで、石井佳江氏(淀川キリスト教病院放射線治療科部長)が、「緩和医療と放射線治療」をテーマに登壇した。最初に、放射線治療の目的は大きく分けて、①腫瘍の抑制や治療を目指す根治照射②症状緩和やQOLの維持・向上を目的とした緩和照射――の2つだと説示。緩和照射は転移したがんや、腫瘍出血に対する止血なども対象だと述べた。放射線治療も、治療中に起こる急性期有害事象や、治療後に発生する晩期有害事象などがあると報告した。緩和照射を普及させて有効活用するためには、院内・地域だけではなく、「緩和ケアチームによる多職種・多診療科、施設間との連携推進が必要」と力を込めた。
 最後に、池永昌之氏(淀川キリスト教病院緩和医療内科主任部長)が、「消化器症状に対する緩和ケア」と題して講演した。進行がん患者に見られる悪心・嘔吐は一般的症状だと説明。原因として薬剤や化学療法のほかに、▽代謝異常▽消化管系▽中枢神経系▽心理的影響――なども挙げた。悪心・嘔吐に対する薬物療法として、①ドパミンD2受容体拮抗薬②ヒスタミンH1受容体拮抗薬③抗コリン薬(ムスカリン受容体拮抗薬)④セロトニン5―HT3受容体拮抗薬――の4つを紹介した。症状を誘発させないため環境を整えることや、においに気を付けることも重要だと伝えた。