TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

HIV医療講習会

府医ニュース

2025年4月30日 第3106号

感染の予防・拡大抑制に向けたポイントを伝達

 大阪府医師会はエイズ予防財団からの受託事業として、1月22日午後、府医会館でHIV医療講習会を開催した。当日は、会場とウェブの併用で実施され、医療従事者約80人が受講した。
 開会あいさつで笠原幹司理事は、若年層へのHIV啓発の重要性や陽性者の一般外来受診に触れ、本講演が日常診療に役立てばと期待を寄せた。
 白阪琢磨氏(国立病院機構大阪医療センターHIV/AIDS先端医療開発センター特別顧問)が座長を務め、まず俣野哲朗氏(国立感染症研究所副所長/当時)が、「HIV感染症の制圧に向けて」と題し講演した。冒頭でHIV感染症は、一般的に5年以上の症候潜伏期があり、無症候感染者からの感染拡大を抑制することが困難と前置き。感染予防・拡大抑制に向けた戦略として、▽啓発による予防▽早期診断・早期治療▽予防的投薬▽ワクチン――を挙げた。早期診断・早期治療ができれば、抗HIV薬により体内ウイルス量を減少させ感染者からの伝播リスクを下げられるとし、曝露前後の予防的投薬やワクチンについて説示した。そのほか、抗HIV薬の投与下における加齢関係疾患や免疫低下に対する治療、治癒に向けた治療法の開発などを伝えた。
 続いて、古林敬一氏(たによんスタートクリニック院長)が、「性感染症のトピックス」について梅毒を中心に解説した。はじめに、梅毒は「誤診の宝庫」と述べ、▽慢性疾患で基本的に無症状▽急性疾患のような症状が現れ得る▽症状は多彩で全診療科で遭遇の可能性がある――など特徴を列挙。また、性器ヘルペスと初期梅毒、エムポックスの症状は区別しづらく、定期的な梅毒抗体検査が診断の決め手になるとアドバイスした。さらに、妊娠中の梅毒感染症に関する実態調査から、若年層ほど分娩時の感染率が高いと指摘。治療開始が遅れると、母体も児も予後が悪くなると加えた。あわせて、新生児の出生時無症状梅毒への注意を促した。