TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

傍聴記

府医ニュース

2025年4月30日 第3106号

「危機感の共有」地域から日医への押し上げを望む

 東京ではここ数日、初夏を思わせる陽気が続き桜は九分咲きとなっていた。「川沿いに桜を植えるのはね、花見客に土手を踏み固めさせるためなんですよ」タクシー運転手の話の真偽はさておき、理にかなった話だと頷いていると、気が付けば日本医師会館に到着した。
 初めての日医会館に緊張と戸惑いがあったものの、栗山隆信・大阪府医師会理事から丁寧に説明と案内をいただき無事近畿ブロック控室へ入室。室内は思っていたよりも和やかな雰囲気であった。
 第158回日医臨時代議員会は冒頭、松本吉郎・日医会長のご高配で澤芳樹・府医副会長より大阪で開催予定の日本医学会総会の紹介があった。その後、会長あいさつから議事へと移る。第1号議案では加納康至・府医会長が理事として選任された。そこから19件の代表質問が始まり、多岐にわたる内容の質疑、答弁は聞きごたえのあるものであった。
 府医からは北村良夫理事が医療DXに関する代表質問に関連して、マイナンバーカードと保険証の紐づけと紙の保険証の廃止に関して質問された。これは先日の府医代議員会において松原謙二代議員の質問に対して答弁されていた内容を、改めて日医に確認する形になったものである。また、病院と有床診療所の経営危機対策に関連して、宮川松剛副会長からは、第8次医療計画の中の拠点事業である在宅医療において緊急時の病院対応が経営上非常に厳しいことが指摘され、診療報酬などの経済的支援を日医に対して要望された。
 特記すべきは、栃木県医師会の小沼一郎代議員からの代表質問「次期診療報酬改定に望むことは新設された生活習慣病管理料(Ⅱ)とリフィル処方の廃止である」に関して、「現在の医師会に必要なのは各論ではなく総論だ」と高知県医師会から関連質問として提議されたことであろう。今回、生活習慣病管理料(Ⅱ)やリフィル処方に対して廃止を訴える要望が多かったが、日医の答弁は、いずれもすでに財源として組み込まれたものであり医療費抑制政策が採られて以降、財源というフレームが決まっている以上、何かを廃止すれば別の何かを削られる、よって慎重にならざるを得ないとのロジックであった。
 しかしながら、医療費の財源は国費で賄われるべきものであり、税収を財源とすべきではないのではないか。医療費フレーム論という誤ったプロパガンダは、社会保険料のつり上げで国民を脅し、社会分断と医療費亡国論の手先に仕立て上げる手法とともに糾弾されるべきものである。
 前回の日医代議員会において、「国家財政論は代議員会の場で議論しても仕方がない」という理由で取り上げられなかったが、国民の生命を守るという使命を全うするためには、マクロな視点で国家財政に対しても大いに議論し、忌憚なく国や財界に意見すべきではなかろうか。
 このような議論は日本経済が潤って右肩上がりの時には起こり得なかったものであろう。しかしバブル期以降の日本経済は高齢化の伸びに追いつけず、あたかも水面下に隠れていた土台となる岩が姿を現した感がある。財務省は「骨太の方針」に基づき、水位を上げることではなく岩を削ることに躍起になっているが、この岩は国民の健康を守る土台であり我々はこれを削ることに強く反対せねばならない。今回の代議員会を傍聴し、各代議員は危機感を共有していることに安堵しつつ、先人が積み上げ踏み固めた日本の底となる土台を支えるためにも地域から日医への押し上げが必要であると痛感した。(隆)