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第158回 日本医師会臨時代議員会

府医ニュース

2025年4月30日 第3106号

国民皆保険制度の理念を堅持

 第158回日本医師会臨時代議員会(定数380人/柵木充明議長〈愛知県〉)が3月30日、日医会館で開催された。当日は令和7年度事業計画および同予算が報告されたほか、加納康至・大阪府医師会長が日医理事に選任された。各ブロックからの代表質問では、診療報酬改定や地域医療構想などを巡る課題が指摘され、日医執行部が答弁した。

医療費削減ありきの国の主張に反論 補助金と診療報酬 両面から対応を

 柵木議長が開会を宣言し、定足数を確認。2人の議事録署名人の指名と議事運営委員会委員8人(近畿からは友岡俊夫代議員〈奈良県〉)を紹介した。
 開会あいさつに立った松本吉郎・日医会長は、冒頭で3月28日に発生したミャンマー中部を震源とする大地震に触れ、ミャンマー医師会に対する500万円の緊急支出を表明。追加支援の検討も行う方針を示した。
 次いで、医療機関の厳しい経営状況を憂慮し、医療費削減ありきとする国の主張に異を唱えた。8年度診療報酬改定前の期中改定も視野に入れ、補助金と診療報酬の両面から対応を求めると言明。「骨太の方針2025」の議論の本格化を目前に、▽社会保障予算の目安対応の廃止▽診療報酬等について、賃金・物価の上昇に応じて適切に対応する新たな仕組みの導入▽小児医療・周産期体制の強力な方策の検討――が現状を打開するとした。
 また、日医会長就任以来、組織強化に注力してきたが、昨年7月に全国の医師会の尽力により初めて会員数が17万7千人を超えたとし、謝意を表した。
 新たな地域医療構想では、医療・介護連携の重要性を鑑み、介護を含めて同構想を深化させたとした。現行の「回復期機能」に代わる「包括期機能」の提案・実現も報告した。
 医師偏在対策に関しては、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」には日医の提案内容が概ね盛り込まれ、解決のための基本的な考え方になっていると評価した。
 そのほか、かかりつけ医機能報告や医療DXなど山積する課題に見解を述べた上で、7月に予定される参議院議員選挙を「医療の未来を左右する重要な選挙」と強調。日本医師連盟の組織内候補となる釜萢敏・日医副会長への支援を呼びかけた。
 最後に、国民皆保険制度の理念を堅持し、給付範囲を縮小すべきではないと明言。今後とも国民の生命と健康を守るべく邁進するとし、日医執行部への一層の支援を要請した。

令和7年度事業計画 同予算を報告

 角田徹・日医副会長が、7年度事業計画および同予算を報告した。それを受け、平川博之・財務委員会委員長(東京都)から、1月24日に開催された本委員会で、事業計画案および予算案を審査の上、適正であることを確認し、承認した旨が伝えられた。
 その後、各ブロックから代表質問。19題の質問に、日医執行部が見解を示した。
 近畿ブロックからは、三浦一樹代議員(兵庫県)、友岡俊夫代議員(奈良県)、禹満代議員(京都府)が質問に立った。

加納・府医会長 日医理事に選任

 議事の日医理事選任では、松本・日医会長が、中尾正俊理事(前府医会長)逝去に伴う欠員選挙と説明。候補者は定数どおりで、加納康至・府医会長が挙手多数で選任された。任期は、選任日から8年6月開催予定の定例代議員会終結時まで。

「第32回日本医学会総会2027」への積極的な参加・支援を要請

 「第32回日本医学会総会2027」の会頭を務める澤芳樹代議員(府医副会長)が登壇し、概要を説明。「医学のレジリエンス――みらいへの挑戦と貢献」をメインテーマに掲げ、コロナ禍を乗り越えた今こそ、回復力や復元力を意味するレジリエンスについて議論を交わしたいと語った。また、日医代議員が日本医学会総会会頭を務めることは極めて稀であり、日医と医学会が一丸となって医学の発展に貢献するきっかけとなる総会にしたいと力を込めた。

賃金・物価上昇等による医療機関の経営危機 茂松・日医副会長 日医の基本姿勢を示す

 赤石隆代議員(宮城県)は、医療機関の経営危機への対策として、次期診療報酬改定を待たずに期中改定を働きかけるか、十分な額の補助金を恒常的に支給させるのか、日医の基本姿勢を問うた。
 答弁に立った茂松茂人・日医副会長は、実現した補助の実績を示すも、昨今の賃金・物価上昇には追いついていないと言及。「骨太の方針2025」には、賃金・物価上昇等を踏まえ、社会保障予算の目安対応の廃止や、診療報酬上で適切に対応する新たな仕組みが盛り込まれるよう強力に行動すると述べた。

関連質問

 宮川松剛代議員(府医副会長)は、これに関連し、第8次医療計画に位置付けられる「在宅医療に必要な連携を担う拠点」に論及。現在の経営状態では、緊急対応ができる病院が確保できない可能性があり、大阪では診療報酬上の評価や補助を求める声が上がっていることを伝えた。