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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2025年4月16日 第3105号
大阪府医師会・大阪府・大阪市主催による第2回「認知症サポート医フォローアップ研修」が3月1日午後、府医会館で開かれた。ウェブとの併用で実施され、会場と合わせて約330人が聴講した。
はじめに前川たかし理事があいさつ。今後の高齢化の進展に伴い「医療と介護を必要とする高齢者が増加する」とし、適切な対応が必要だと述べた。あわせてMCI(軽度認知障害)を含む認知症対策が肝要だと強調。本日の研修で理解を深めてほしいと語った。安田健司氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が座長を務め、池田学氏(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室教授)が、「新時代の認知症診療・ケア」と題して講演した。まず、認知症患者の現状を報告。厚生労働省の調査では、平成23年時点で認知症の方は462万人であったが、現在は約500万人とされ、「想定より低く抑えられている」と分析。MCIの段階で留まっているとの見方を示し、「認知症対策が一定の効果を及ぼしている」と述べた。さらに、高齢者の外出頻度が低く、週に1回未満しか外出しない人の割合が高いことにも言及した。クリニックの受診が貴重な外出機会となっているケースもあり、かかりつけ医の役割は大きいと主張。「一人暮らし高齢者に孤独を感じさせない環境づくり」を求めた。
アルツハイマー型認知症については、疾患修飾薬の登場により、MCIの早期段階での診断・治療で、自立した生活を延ばせると期待されている。一方で、▽専門医療機関の受診▽頻回のMRI検査など経済的負担▽超早期段階での告知と意思決定支援▽新たな医療連携の確立――といった課題が挙げられた。
池田氏は、認知症症状が発現する前段階で、「薬が効かない精神症状」が確認されることがあると注意を喚起。あわせて、MBI(軽度行動障害)と認知症との関連も注目されており、50歳以降に意欲低下や感情調節障害、社会的不適合、妄想・幻覚などの症状が6カ月以上持続する場合は、専門医への受診を念頭においてほしいと訴えた。
最後に、認知症基本法に明記された「共生社会の実現」に向けて、MCIへの対応や、高齢者の独居・夫婦二人世帯への支援が今後ますます重要になると強調。社会全体で支援の準備を進める時期に来ていると結んだ。