TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時事

マイナ保険証利用率が足踏み

府医ニュース

2025年4月16日 第3105号

利用促進策の表と裏

 4月3日、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会が開催され、マイナ保険証の利用促進が議題の一つとなった。マイナ保険証利用率(同利用件数/オンライン資格確認利用件数)は、昨年12月に、前月の18.52%から大きく上昇して25.42%となったものの、以降は25.42%(今年1月)、26.62%(2月)と、足踏み感がある。会議で示された主な利用促進策は以下である。
 ①スマートフォンへのマイナ保険証機能の搭載(いわゆる「スマホ保険証」)……10施設程度での実証事業実施を経て、早ければ8月下旬から、環境を整えた医療機関での利用が可能となる(義務化はせず任意)。具体的には、医療機関では、既存の顔認証付きカードリーダー(CR)と並べて、汎用CR(縦横はカードより一回り大きく、厚さ1㌢程度)を設置する。患者は、顔認証付きCRのタッチパネル操作と、汎用CRにかざしてのスマホ読み取りを組み合わせて受け付けを行う。医療機関での汎用CRの購入(1万数千円程度)に当たり、厚労省は補助を検討中とのことである。また、顔認証とスマホ読み取りの両者に単体で対応し、音声案内機能をはじめ、性能を改善した次期顔認証付きCRが、来年夏頃に販売開始見込みとのことである。なお、スマホを保険証として利用するためには、▽iPhoneでは生体認証(FaceID・TouchID等)の登録▽マイナポータルアプリからのスマホ用電子証明書の利用申請(iPhone搭載は今春予定)▽スマホへの電子証明書の登録──といった事前準備が必要である。
 ②顔認証付きCRの運用改善……▼同意方法の画面で「個別に同意」を選択した場合、医療機関ごとに前回の同意状況を引き継げる(2月1日より)▼顔認証や暗証番号の入力操作が不可能な場合の目視確認モードについて、資格確認端末での操作を不要とし、顔認証付きCRの操作のみで行えるようにする(4月6日から)。
 ③顔認証付きCRの故障時や操作が困難な患者の場合に、訪問診療や通常とは異なる動線での資格確認に活用されている、居宅同意取得型の仕組みを用いることを可能とする(4月より。異なる動線において目視確認を可能とする仕組みの実装は4月6日から)。また、そのためのモバイル端末の導入やレセコンの改修費用の一部補助を行う。7月頃の受け付け開始が予定されており、診療所の場合、補助率4分の3、補助限度額12.8万円と、過去に実施された補助と同様である。
 ④診察券とマイナンバーカードの一体化のための、医療機関のシステム改修費用補助を、今年度も実施。
 一方で、後期高齢者に関しては、マイナ保険証の利用率が85歳以上で17.2%(昨年12月時点)と低い状態のまま、7月末に一斉に有効期限を迎える。資格確認書の交付申請が市町村窓口に集中する恐れがあるとして、来年夏までのもう1年間、マイナ保険証の保有状況に関わらず資格確認書を交付する暫定運用が継続されることとなった。
 一連の施策により、個々の局面では確かに便利になるが、裏を返せば、医療機関での対応バリエーションや必要な機器は、増える一方でもある。(学)