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社会保障改革に関する骨太の方針が6月決定

府医ニュース

2025年4月16日 第3105号

自公維の協議体で決定され令和8年度の予算編成に反映

 自民党、公明党、日本維新の会は、3党協議体を立ち上げ、今夏の骨太の方針を視野に、社会保障改革の方向性を5月中旬までにまとめるとした。維新からは、改革により「4兆円規模の医療費を減らし、年間社会保険料を6万円減らす」と主張している。
 3党合意の協議内容は、①OTC(Over The Counter)類似薬の保険給付の見直し②応能負担の徹底③医療DXの推進④医療介護の成長産業化――の4項目。一時凍結になった高額療養費の負担増は②に基づくもので、拙速な案であったため一時凍結となった。関係団体との話し合いにより、今秋ごろまでに結論を出すとしている。
 医療用医薬品には、「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に分けられ、後者がいわゆる「零売」(分割販売)可能な医薬品とされている。約7千品目あり、古くから承認されている医薬品(漢方薬、ビタミン剤など)、一般医薬品の成分として指定されている医薬品(解熱鎮痛剤、胃腸薬、ステロイド外用薬など)が該当し、一定のルールで販売されている。「原則零売禁止」であるが、薬剤師が対面で、緊急避難的に少量、購買者の名前・連絡先・販売した薬剤師名の記録(2年間保管)、そして必要な受診勧告を行うことが条件である。現在、参議院厚生労働委員会で、「零売規制の法制化」が審議されているが、維新議員の法制化反対に対し、政府は「通常処方される数量を大きく超えて零売する不適切な事例があった」と説明した。OD(Over Dose)が若者の間で社会問題となっている今、零売禁止は当然のことである。
 セルフメディケーション推進の考えから、風邪や鼻炎、胃もたれ、腰痛などの症状に対して、スイッチOTC薬の風邪薬、鼻炎薬、胃腸薬、湿布薬等の利用が勧奨されている。維新は、「OTC類似薬の保険外し」で4兆円削減すると主張している。その数字も根拠不明で、ある研究者の試算でも数千億円から1兆円未満である。私見であるが、本当に軽症な風邪かどうかの素人判断は危険で、重篤な疾患が隠れていることは、多くの臨床医は経験している。医療安全の面からも対面での診察は重要(医師法20条)である。そして、市販薬は保険薬よりはるかに高価で、患者目線で考えても不利益となる。現在は、急性呼吸器感染症は感染症分類の5類となり、定点サーベイランスの対象である。その政策の理念とも相反する。
 3月12日、日本医師会と6病院団体は記者会見を開き、6年度の診療報酬改定でさらに病院経営が悪化し、全国の61.2%が赤字経営と発表した。病院の存続が危ぶまれ、地域医療体制の構築にも影響する事態である。日医は、「必要な医療は保険医療でカバーするという国民皆保険制度の理念」を堅持し、政府には「医療費を高齢者の伸びに抑える」というシーリングの考え方を再考していただきたい。