TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

紅麹

府医ニュース

2024年5月1日 第3071号

 最近紅麹の評判が悪い。妻はニュースが出て早々に、紅麹入り味噌をスーパーに返却に行って返金してもらった。何て馬鹿なことをするのかと思った。味噌とかドブロク(アルコール1%未満)を作った経験がある人なら分かるが、雑菌というか、カビというか、麹カビと共存しながら生えてくる、雑菌が作った意図しない成分に時々遭遇する。それでできたものを口にすれば、ドブのような臭いか、吐きそうな味がするのであるが、そういうものは非常にまずくて、もったいないが即刻捨てるのである。
 杜氏にしろ味噌職人にしろ、自分の鼻と舌でチェックするので、麹カビ以外の雑菌が作ったものを除外するシステムを持っている。味とか臭いというのは、生物が自分を守る手段として発達させた高度技術であるから、まずいとか臭いというのは、そういう危険な物質を避ける超高感度の防御機能なのである。意図しない成分を出す雑菌が、旨い酒とか味噌を作れるわけがないのである。そういうものを旨いと思わないのは、そういうものを食べた生物が朽ち果てたからであろう。従来日本では、そういうものを腐敗と呼び、旨いものを作る発酵とは敵対関係にあったのである。
 紅麹入り味噌を返却するのであれば、その製造過程から考えて、味噌は言うに及ばず醤油、酒、味醂、鰹節、果ては納豆やヨーグルト、チーズ、パンまで食べられない。日本の食文化は、壊滅的打撃を受けるのである。
 しかし例え変な味であったとしても、錠剤化すると良薬は口に苦しで区別はできない。〇〇製薬は菌体そのものを製品化することで、食品会社にはないリスクを負ったのであろう。紅麹は中国で2千年も前から使われていたから、漢方薬と同じように、十分安全性は確立されているはずだ。
 私にとって紅麹の最高峰は豆腐餻(とうふよう)だ。沖縄では最高の珍味の位置付けだが、とても高価である。最近本場の豆腐餻が、中国料理具材の専門店で安く売っていた。値段が高いのは、赤い色が毒々しいから、白い麹に慣れた日本人の消費者が少ないからだろうか。意図しない成分を出す雑菌が作った豆腐餻は、最高にまずいと確信している。(晴)