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医師・医療関係者のみなさまへ

医療情報に関する講演会

府医ニュース

2024年5月1日 第3071号

IT活用でシニア世代の活動の幅を広げる

 第36回「医療情報に関する講演会」が3月21日午後、大阪府医師会館で開かれた。本講演会は、医療情報分野への関心を高め、その活用の幅を広げることを目的に実施。今回は「医療DXに乗り遅れたならば、我々に未来はない!」をメインテーマとし、オンラインと合わせて約70人が参加した。

 清水智之理事が司会を務め、冒頭、阪本栄副会長があいさつ。ICTが進歩を遂げる中、医療分野においても令和5年1月に電子処方箋の運用開始、4月にオンライン資格確認の義務化など大きな影響を及ぼしていると述べた。医療DXは過渡期を迎え、医療とICTの関わりはさらに深まっていくと指摘。本講演会が参考になればと期待を寄せた。

若宮正子氏へプログラミング指導経験を基に高齢者の可能性広げる

 篠永安秀氏(府医医療情報委員会委員長)が座長を務め、小泉勝志郎氏(株式会社テセラクト代表取締役社長)が、「シニア世代の可能性を引き出すITテクノロジー」と題して講演した。小泉氏は、「シニアプログラミングネットワーク」というシニア世代のプログラミング学習を支援する団体を運営しており、総参加者数は900人以上になる。
 事業を始めたきっかけは、81歳で初めてゲームアプリを開発した若宮正子氏に「プログラミングを教えたこと」だと言及。そこから活動を広げてきたと語った。同氏は、シニア世代が活動を続けるには、「仲間とのコミュニティ」が重要と強調。講座を定期的に実施し、成果発表会を行うなどモチベーションの向上につなげていると述べた。また、高齢化の進展を見据え、「シニア世代の知見を世界へ」が目標だと言明。シニア世代をプログラミングの講師として育成し、全国で対面講座や小学生向けのGIGAスクールなど、幅広い展開を考えているとした。
 次に、生成AIについての持論を展開。ChatGPTなどは自然言語で簡単に操作が可能であり、他のルールを覚えさせてカスタマイズすることで、作曲や画像生成などの操作も容易に行えるとした。シニア世代にはまず生成AIに触れてもらうことから始め、「可能性を広げてもらいたい」と締めくくった。

骨太の方針踏まえ医療DXの方向性解説

 引き続き、上野智明氏(日本医師会ORCA管理機構株式会社取締役副社長)が、「時事トピック――医療DXについて」と題して講演。まず、令和5年6月に決定した医療DXの推進に関する工程表を示した。「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」では、①全国医療情報プラットフォームの創設②電子カルテ情報の標準化③診療報酬改定DX――が具体的に推進すべき施策として明記されているとし、それぞれの概要や動向を説示。情報化の基盤となるオンライン資格確認や電子カルテ情報共有サービス、取り扱われる3文書6情報について詳述した。
 また、クラウドベースの標準型電子カルテのシステムに言及。国が必要最小限の基本機能を開発し、民間事業者等が各施設のニーズに応じたオプション機能を提供できるような構成を目指して開発が進められているとした。診療報酬改定DXについては、同社とフューチャーアーキテクト株式会社の共同で、診療報酬算定と一部負担金の計算を行うための「共通算定モジュール」の開発に注力していると結んだ。