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時の話題

新たにコロナワクチンを承認

府医ニュース

2023年12月27日 第3058号

国産初の実用化

 令和5年11月28日、厚生労働省は国産では初となる新型コロナウイルスワクチン「ダイチロナ筋注」を承認した。新型コロナのオミクロン型の派生型「XBB・1・5」に対応し、ファイザーやモデルナと同様のmRNAを使う。
 ファイザーやモデルナが開発したmRNAワクチンは、ウイルスのスパイク蛋白質全体が作られるが、第一三共のダイチロナはヒトの細胞と結合するスパイク蛋白の一部のRBD(受容体ドメイン)の部分のみを作るので、mRNAの長さが前者より短い。製造工程で品質管理がしやすく、変異ウイルスに対応してmRNAを作り直す作業が容易であるという利点がある。また、米国2社のコロナワクチンは冷凍保存が原則であるが、第一三共のワクチンは2~8度の冷蔵で流通・保管が可能で有効期限は冷蔵で7カ月である。
 第一三共は、このワクチンを埼玉県北本市の工場で製造する。生産規模は開示していないが、政府と合意した140万回分の生産はめどが立っている。mRNA医薬品を巡っては、AGCが令和6年にも原料であるプラスミドDNAの国内生産を千葉県の工場で始める予定である。経済安全保障の観点から、原材料も海外に頼らず国内で調達できる体制が整うことは大変重要である。
 現在、特例臨時接種の秋の接種(5年9月20日~6年3月31日)が実施されており、生後半年以上のすべての人が無料で接種できる。接種者の大半が高齢者で、若年者の接種率は極めて低い。11月中旬以降かなり接種者が少なくなってきている。厚労省は、この秋の接種に実施する接種用にファイザー、モデルナと計4500万回分を購入契約している。第一三共のダイチロナも12月上旬から配送されるが、140万回と少なく、ごく一部の人が接種されることになる。
 5年11月22日、厚労省は来年度以降の新型コロナワクチン接種について、65歳以上の高齢者と60~64歳で一定の基礎疾患がある人を対象として定期接種とする方針を決定した。地方交付税で約3割を補助した上で、原則一部の自己負担を求める。定期接種の対象外であっても、自治体などの補助金を除き全額自己負担となる任意接種はできる。
 ファイザーのワクチンは1バイヤルが6人分で集団接種には使いやすいが、個別接種には使いにくい。それに対して、ダイチロナは1バイヤル2人分で、1箱に2バイヤル入っている。ファイザーワクチンでは多くの医院は6人単位で予約接種としているが、当日キャンセルや、接種希望者が少数になると、6人分を2~3人で使用せざるを得ない場合もある。
 ワクチンロスが問題となる。それに対して、ダイチロナはインフルエンザワクチンと同様であるので、個別接種には向いていてワクチンロスも少ない。来年度の秋の接種はダイチロナが中心となると思われる。