TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

ナショナリズムの呪縛

府医ニュース

2023年11月15日 第3054号

 『ガザ市街侵攻 戦闘激化 イスラエル 医療105施設を破壊か』この新聞の1面記事に息をのんだ。イスラエル軍が、ガザ地区内の医療機関を集中的に爆撃するのは、「病院地下にハマスの軍事拠点があるから」だという(どこかで似たような話を聞いたことがある)。そして破壊された病院には小児専門病院の名前もあった。そして「ハマスの戦闘員が乗っている」という理由で、救急車の車列を空爆したという発表も続く。
 病院には病人の他に避難してきた非戦闘員である市民がいるが、そこを集中的に空爆対象としていることに信じられない思いでいると、『イスラエルの医療関係者が連名で、「ガザ地区の病院を全て空爆すべし」という請願をイスラエル軍に出した』という報道が続いた。ガザ地区の包囲を終え、市街地入りしたイスラエル軍の戦車には、巨大重機が後続し、爆撃後の市街地を更地化し、入植する準備すらできているという。
 かつてナチス・ドイツが行ったユダヤ人へのホロコーストを、今度は挙国一致でユダヤ人がパレスチナ人に行っているという現実は、ナショナリズムの行き着くところの恐ろしさを思い知らされる。私達医師は「ヒポクラテスの誓い」を自らの行動規範とし医療に携わっているが、ナショナリズムのもとでは最早、この誓いが無意味であることを痛感している。
 悲惨な報道を目にする度に胸が張り裂けそうだ。ネタニヤフ首相を支持し続けたイスラエルは、第二次世界大戦終結後、世界から受けた同情を帳消しにしてしまった。
(猫)