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北区認知症高齢者支援ネットワーク

府医ニュース

2023年11月1日 第3053号

区民向け啓発講座を開催

 北区認知症高齢者支援ネットワーク(にこりんく)は9月28日午後、大阪市内で令和5年度にこりんく認知症講演会を実施。にこりんくは、認知症になっても安心して暮らせる町づくりを目指し、地域で連携し認知症患者を支援している。当日は、地域住民や医師、介護関係者など108人が参加した。

 本出肇・北区医師会長の冒頭あいさつに続き、松本一生氏(松本診療所院長)が、「認知症高齢者の家族支援について――ひとりで抱え込まない秘訣」と題し、自身の介護経験や日常診療から得られた統計結果を用いて講演した。
 まず、患者本人の認識は、認知症の型による差があるものの、「一般的な印象よりしっかりしている」と前置きし、感情は不安や絶望などが大半を占め、混乱が強いほど支援が難しいと語った。あわせて、介護家族の心の段階として、①驚愕②否認③怒り④うつ⑤適応⑥再起――を説示。他人の意見を敬遠する「否認」から、周囲の傾聴により気持ちの整理を図れる「怒り」に移った時が、支援を始めるチャンスだと力を込めた。
 次に、介護孤立の条件として介護家族の、▽弱音を吐けない▽白黒をはっきりしたい▽目標設定が高すぎる――傾向を指摘。加えて、介護で燃え尽きやすいといわれる「メランコリー親和型性格」を引き合いに、介護に携わる人には対策として、「時には何かを断るなどを実践してほしい」と呼びかけた。
 続いて、初診からの経年ごとに本人と家族の状況を比較。本人が混乱のピークを迎える3年目は、家族の体調が落ち着いているが、本人が安定する7年目には、家族が体調を崩しがちだと解説し、本人が落ち着いた時こそ地域で注意を向け、交流してほしいと力説した。
 最後に、何もできない時は「関与しながら観察する」ことを提言し、地域で孤立している人こそ支援対象だと認識してほしいと結んだ。
 講演を受け、森田昌宏・大淀医師会副会長が、より一層の地域連携を要請し締めくくった。