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時事
府医ニュース
2023年10月25日 第3052号
本年9月、診療報酬等に関する省令改正案として厚生労働省は、診療報酬の請求方法を定めた省令を改正し、使用可能な記録媒体と規定していたフレキシブルディスク(フロッピーディスク:FD)を削除するとした。確かにFDは現場で記録媒体として使用することはほとんどなく、現実に即した改正と言える。
一方、同改正案では、「書面による請求」と「光ディスク等を用いた請求」についても見直しがなされた。案では、光ディスク請求に関しては来年4月に新規適応を廃止。9月末までに原則オンライン請求に移行するとのこと。書面による診療報酬請求(紙レセプト)については、来年4月以降、あらかじめ審査支払機関に届け出たものに限り行うことができるとされている。
これは本年3月23日に開催された社会保障審議会医療保険部会において厚労省が示した「オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ(案)」(PDFで閲覧可能)に示されていた。紙レセプト請求が条件付きで存続するので、オンライン対応できなくとも配慮がされているように思われるが、実際は、強制的な移行となる。
オンライン請求への移行を目指すのはいい。しかし、すでにオンライン請求を行っているものの請求期間中に何らかの送信トラブルが起こり、一時的に光ディスクを用いて請求することがあろうかと思う。つまり、光ディスク請求がオンライン請求のバックアップとなっているケースだ。その場合、光ディスク請求廃止によって、現場で様々な問題を引き起こす恐れがある。特に経営が不安定な医療機関にとっては、診療報酬の、基金からの振り込みが遅れることが、即、閉院のリスクにつながるであろう。
先程の「ロードマップ(案)」では、オンライン請求を100%に移行する根拠として、オンライン請求機関が増加する一方で、光ディスク等と紙レセプト請求は減少してきている(本年1月請求分で、オンライン請求機関が約15万、光ディスク等は約6万、紙レセプトは7千)データを挙げている。オンライン請求を限りなく100%に近づける未来には、保険者、医療機関、患者などが多くのメリットを享受できると読めるが、デメリットに関しては触れられていない。その一つは、先程も述べた、いざというときのバックアップシステム(備え)の喪失である。
マイナンバーカードによる医療資格確認問題では、現行の健康保険証というバックアップがなければ、コロナ禍と重なった医療の現場はさらに混乱していたに違いない。また、今回の「ロードマップ(案)」には保険証廃止という言葉も存在している。今回の改正案もすべて保険証廃止の「納期を守るため」に、無理やり進んでいるのではないかと邪推してしまう。(葵)