TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

公的国民皆保険制度の危機は続く

府医ニュース

2023年10月18日 第3051号

 20年程前、「診療情報の民間活用」を目論んだ財界から電子カルテ・電子レセプトの普及推進の意見が噴出した。「電子化に対応できない医療機関には診療報酬点数を低く設定を」「理由を問わず、対応できない医師は即廃業」とする財界人もいた。反論する日本医師会に対して「医師会は勤務医とは無関係なのだから、その主張は医師全体の意見たり得ない」といった露骨な分断も試みられた。そして「国民皆保険制度に止めを刺すのでは?」と懸念された2017年のTPP締結。皮肉にも、締結と同時にトランプ政権下の米国はTPPから離脱した。
 「しかし!」である。今年6月28日、経済同友会・代表幹事の新浪剛史氏は、紙の保険証廃止を予定通り遂行するよう、強く政府に迫った。「納期!納期であります!」「(政府は)ぜひとも保険証廃止を実現するよう、納期に向けてしっかりやっていただきたい!」。
 3カ月後、氏は、さらに踏み込んだ発言をする。医療制度について「民間主導の民間が投資していく分野で、国民皆保険ではなく、民間がこの分野を担っていったらどうかと思います」と発言した。財界が何故、紙の保険証廃止に固執したのかを知った瞬間であった。IT利権どころではなかった。人権にもかかわる制度の根幹を揺るがす発言に世論の反発は激しく、10月3日、氏は「誤解を招いた」として発言を撤回せざるを得なかった。政府にも改めて撤回を求めたい。
(猫)