
TO DOCTOR
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府医ニュース
2023年10月4日 第3050号
高石市医師会(矢田克嗣会長)は、8月26日、高石市アプラホールと共催で映画「見えないから見えたもの」上映会を実施した。映画上映会は医師会の広報活動の一環として毎年実施していたが、コロナ禍で中止していたため、実に4年ぶりの開催である。
映画は、全盲の盲学校の教師である竹内昌彦氏が、自身の生い立ちを綴った本「見えないから見えたもの」を友人達が奔走し、募金を集め映画にしたものである。
竹内氏は昭和20年2月中国天津で出生。引き揚げ船中での重症の肺炎のため、視覚障害の後遺症を起こし、8歳の時には網膜剥離により失明。視力障害のために壮絶なイジメにあいながらも、学業を続け、岡山県立盲学校教員となり、教職の傍ら、退職するまで、命の大切さ、生きることの意味を訴える講演を3000回以上にわたり行っている。
今回、上映会には岡山県から主人公である竹内氏が駆けつけて、上映の前後に、熱のこもった講演を聴かせてくれた。
講演では、「8歳で失明した時と、長男が障害を持って生まれ、わずか7歳で亡くなった時が、死にたいほど辛かった」と述べ、それでも、全盲の自分を支えてくれた両親、恩師、友人に恵まれて、辛かったこと以上の幸運も授かったと回顧。亡くなった長男は「自分が幸せになりたいと思っていた性根をたたき直し、人に幸せを届けるために生きよと教えてくれたのではないか」と語っている。
そして、「学校ではいじめの問題が後を絶たない。今ここにも、いじめられて死にたいと思っている人がいるかもしれない。しかし、死にたいと思った時、思い出してほしい。あなたの命はあなただけのものではない。あなたを思う父母、祖父母も、友人もあなたが死ぬことでどれほど苦しむだろう。苦しかったら逃げてもいいが、命を捨てることだけはしないでほしい。戦争中は、多くの命が火に焼かれ、海に沈んでいった。大震災では、どれほどの人が海に流され、山にのまれたことだろう。平和な大地に生きていることを忘れず、生き延びてほしい、命さえあれば、いくらでもやり直せる」と訴える。多くの苦労を乗り越えてきた人の言葉だからこそ、人の心を動かす力があるのだろう。会場のあちこちからすすり泣く声が聞こえた。
竹内氏は、定年退職後、途上国の視覚障害者にも勉強できる機会を与えて自立を支援したいと、モンゴルとキルギスに盲学校を設立。盲学校は発展し、多くの子ども達が集まるようになったが、入学希望者の中には、簡単な手術で見えるようになる子がいると知り、手術費用を送ったと明かした。それでも、望みのある子ども達みんなに光を届けるためには自分一人ではとても足りないと、ヒカリカナタ基金を立ち上げ、今までに637人の子ども達が手術により視力を取り戻したという。「死ぬまでに1000人の子ども達に光を届けたい。皆さん応援してください」と締めくくられた。
その後、ミャンマーで手術を受けて眼が見えるようになった、ピピちゃんの眼の包帯がとれ、ドクターの指が見えるようになった様子を放映して、上映会は終了した。
どんな時も前向きに歩み続けることの大切さ、「生きる意味」、「命の尊さ」――。今回の上映会は、来場された竹内氏のおかげで、非常にインパクトの大きなものになり、生の言葉の持つ力を痛感させられた。
報告・写真 高石市医師会