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医師・医療関係者のみなさまへ

かかりつけ医認知症対応力向上研修

府医ニュース

2023年9月27日 第3049号

認知症診療に関する知識を研鑽

 大阪府医師会・大阪府・大阪市が主催する令和5年度「かかりつけ医認知症対応力向上研修」が8月5日午後、府医会館およびウェブのハイブリッド形式で行われ、315人が受講した。本研修は、かかりつけ医が適切な認知症診療の知識・技術などを習得し、支援体制を強化することを目的に実施している。

 はじめにあいさつに立った中尾正俊副会長は、今年6月に成立した認知症基本法に言及。同法は、「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことのできる社会の構築」を基本理念としていると述べた。その上で、専門医・かかりつけ医・地域の多職種連携によるネットワークが、認知症の人とその家族の生活全般を支えていくとし、本研修会が府内の認知症対応力の底上げにつながればと期待を寄せた。
 講演では、林正則氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が座長を務め、最初に松本一生氏(松本診療所院長)が「基本知識編」をテーマに登壇。認知症の概念や原因疾患を解説したほか、▽アルツハイマー型▽血管性▽レビー小体型▽前頭側頭葉変性症――の「初期に多い症状」「特徴的な所見」など早期発見のポイントを自身の臨床経験を交えながら詳説した。そのほか、各認知症患者が新型コロナウイルス感染症の危険性を認識できた割合を提示。それぞれの特徴に応じた対応を呼びかけた。
 続いて、河原田洋次郎氏(大阪市立弘済院附属病院精神神経科部長)が「診療における実践編」と題して講演。まず、問診時の注意点として、本人だけではなく家族やケアマネジャー、訪問看護師などの関係者から情報収集することが診断を行う上で大切と述べた。さらに、治療中の患者に対する姿勢として、患者自身が強い不安の中で生活していることを理解し接することが必要だと加えた。また、介護者が負担やストレスを抱えると適切なケアが難しくなり、患者の症状が悪化し悪循環に陥る場合があると指摘。介護者支援の重要性を訴えた。
 次いで、藤井真氏(同委員会委員)が「役割編」を説明。認知症におけるかかりつけ医の役割の一つは、早期段階での発見・気付き役になることだと前置き。進行性の認知症であっても、早期からの適切な薬物療法で進行抑制や症状緩和が可能など、早期発見・早期対応の意義を示した。
 さらに、李利彦氏(同委員会委員)が「連携編」として、多職種連携における情報共有の重要性を説いた。また、切れ目のない支援において適切な連携が求められているとし、かかりつけ医には多職種合同研修等の積極的な参加が望まれると述べた。自身が開業している松原市では、患者への適切な対応力を身につけることを目的に「多職種認知症学び合いの場」を月1回行っていると語った。
 最後に、林真由美氏(大阪府福祉部高齢介護室介護支援課認知症・医介連携グループ)が「制度編」を担当。大阪府認知症施策推進計画2021に基づき、市町村と連携を図り総合的に施策を実施してきたことなどを報告した。あわせて具体的施策として、認知症高齢者等の見守りSOSネットワークや高齢者にやさしい地域づくり推進協定などを紹介した。