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時の話題

少子高齢社会⑥

府医ニュース

2023年9月20日 第3048号

外国人との共生

 国際協力機構(JICA)は昨年、人口減少が進む日本が成長を維持するには、2040年に20年の約4倍の674万人の外国人労働者が必要になるとの試算をまとめた。一方、送り出し国側の経済成長を考慮すれば、40年に日本で働く外国人は632万人にとどまり、不足が生じる。JICAはこの試算を基に議論を深めるよう提言している。
 出入国在留管理庁によれば、20年6月末で在留外国人は約288万人で、日本の人口約1億2千万人の約2%となっている。40年は日本の人口が約1億728万人と推計されているので、外国人労働者674万人は約6%である。70年には厚生労働省の推計では外国人の比率は10.8%となっている。現在、中国、韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルが上位5カ国である。
 1993年に施行された技能実習制度は発展途上国の人材育成を通じた国際貢献を目的としたものであったが、実際には労働環境が厳しい業種を中心に人手を確保する手段となっていたためトラブルが相次ぎ、目的と実態がかけ離れているとの指摘があった。
 2019年には、外国人労働者向けの在留資格として、「特定技能1号」「特定技能2号」が新設された。人手不足が顕著な分野は①外食・飲食②建設③介護④宿泊⑤ビルクリーニング⑥造船・船用工業⑦自動車整備⑧飲食料品製造⑨航空⑩産業機械製造業・素形材産業・電気・電子情報関連産業⑪農業⑫漁業――の12分野。特定技能1号は、12分野で一定の業務がこなせるかの技能試験と日本語能力の試験があり、通算5年間の滞在で帰国する。特定技能2号は建設および造船・船用工業の2分野のみであったが、23年6月9日に閣議決定で9分野が追加され、11分野で特定技能2号の在留資格が取得できる。特定技能2号は技能試験により熟練レベルの技能が要求されるが、「配偶者や子」との同居も可能で、在留資格の更新により永住することもできる。介護業は、特定技能2号とは別の「介護」分野の在留資格で「介護福祉士国家試験」に合格すれば、家族とも同居可能で永住権も付与される。
 23年4月10日、政府は「技能実習制度を廃止し、新制度への移行」を求めるたたき台を示した。人材育成という国際貢献ではなく、人手不足の解消を目的とする。そして、同じ業種内での転籍も認める方向を示した。厚労省による「地域外国人材受入れ・定着モデル事業」など、現実には定住化支援に取り組み始めており、実質的には移民政策を進めている。日本国際交流センターの円卓会議は、「外国人の権利義務を規定し、生活基盤の確立への対応、活躍を促すための政府や自治体の責務を明示する『在留外国人基本法』の制定」を提唱し、外国人との共生社会の実現は国の責務であると主張している。
参考:毎日新聞7月14日朝刊
 シリーズ「少子高齢社会」はこれで終了します。