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医師・医療関係者のみなさまへ
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時事
府医ニュース
2023年9月5日 第3047号
地域医療構想において急性期病院とかかりつけ医との連携強化には逆紹介が要となる。以前より中核病院からの逆紹介の必要性が謳われていたが、「逆紹介が前提となる地域医療が十分に医療関係者に理解されていない」「患者の説得が困難」などを理由に大きく進展していない。最近では厚生労働省の文書なども、漫画を用いて分かりやすくなってきているが、逆紹介は患者の同意が必須である。逆紹介を行う際には、患者にその目的や方法、メリットやデメリットなどを十分に説明し、同意を得る必要があるが、この段階で逆紹介後の明確なイメージを持っていないと患者は納得しない。また、社会事情を鑑みる必要もあり、患者の年齢や性別、教育水準や職業、家族構成や生活環境などの背景要因が、健康観や医療観、信頼感や不安感などに影響する。例えば、高齢者や低所得層は病院に依存する傾向が強く、かかりつけ医への逆紹介に抵抗感を持つ可能性がある。女性や若年層は、インターネットやSNSなどで情報収集する傾向があり、かかりつけ医の評判や実績などに敏感である。さらに、地域医療構想の理念や目的を伝えることも重要である。急性期病院に対する信頼感が高く、かかりつけ医や在宅医療に対する理解度が低いという現状があり、地域医療構想の理念や目的を伝えることで、患者の協力意識や参加意欲を高めることが重要となる。
地域医療構想は、中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を参考にしながら医療機関の機能分化・連携を進め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的とする。地域医療構想を完成させるには、患者の協力が第一であり、患者への説明書である総合評価が重要な役割を果たす。総合評価は医師が患者の疾患や治療計画について総合的に評価し、その内容を記録したものである。疾患の総合的な説明のみならず、患者が適切な医療機関に配置されるよう座標軸的な内容を含む必要がある。これは各医療機関が、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4機能に分化・連携していることを視覚化する。患者が自分の座標軸的総合評価を知ることで、最適な医療機関や治療法を自覚することが可能となる。また、地域医療構想に沿った医療提供体制の理解や支持も得られるため、地域医療構想の実現に向けた協力関係が築かれる。
以上のように、かかりつけ医総合評価は地域医療構想において不可欠だが、その作成には困難が伴う。特に単科医にとって全科的内容を含む評価を行うことは難しい。そこで、電子カルテへのAI実装が有効となる。まず電子カルテ入力時に、AIがカルテに記載する内容やよく使う語句を自動学習し入力補助を行う。PDF化された紹介状の文字情報を電子カルテのデータベースに取り込むことは、現病歴の構築に有用である。さらに、診療支援機能にて診断精度を高めるとともに、書類作成機能で適切な書類を作成する。特に情報共有が必要な情報を簡潔にAIにまとめさせる。現時点では患者へのA4一枚の書類を手渡しすることから始めるのが良いと思われる。
現在政府が目指している政策は、医療機関を情報網でつなぐ作業を中心としてきたが、必ずしも費用対効果が高いとは言えない。なぜなら医療機関間で通信される情報は、各施設の電子カルテシステムやデータ形式が異なることが多く、そのままでは互換性がなく、データの変換や整合性の確認などの手間がかかるためである。情報漏洩や改ざんなどのセキュリティリスクも考慮しなければならない。
これらの課題を解決するため、継続的な技術的・制度的な投資は必要であるが、AI電子カルテが地域医療構想の実現に向けて必要不可欠であればあるほど、通信網は自然発生的に進化していくのである。(晴)