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府医勤務医部会が設立50周年―記念式典・記念講演・シンポジウムを実施―

府医ニュース

2023年9月5日 第3047号

勤務医と開業医が団結し、国民の信頼に応える

 大阪府医師会勤務医部会(部会長=澤芳樹・府医副会長)は、昭和48年7月に発足し、今年で設立50周年を迎えた。これを記念し、7月22日午後、大阪市内のホテルで記念式典および記念講演・シンポジウムを挙行。日本医師会や近畿医師会、郡市区等医師会の役員ら111人が参集したほか、ウェブでは96人が参加した。

 当日は杉本圭相副部会長(府医理事)が司会を務め、冒頭、高井康之・府医会長があいさつ。引き続き、参会が叶わなかった初代勤務医部会長の橋本博顧問のビデオメッセージが放映された。橋本顧問は部会設立の苦労を語り、50年にわたり部会活動が引き継がれてきたことに感謝を述べた。

部会設立50周年
現在までの歩み

 澤部会長が、「温故知新――誇るべき50年」として、勤務医部会の成立から現在までの歩みを振り返った。
 昭和20年当時、大阪市の勤務医は恵まれた勤務環境にはなく、待遇の改善を求めて大阪市勤務医師連絡会が組織された。近畿地方勤務医師連絡協議会も立ち上がり、全国的な組織化を目指す機運が高まったが雲散した経緯がある。
 活動の推進には、その基盤を支える組織が欠かせない。勤務医部会の前身となる大阪市勤務医師会が36年に大阪市役所医師会として府医への入会が認められた。こうした流れも汲み、大阪市に従事する勤務医師の給与表が全面的に改定された。府医の働きかけも要因の一つと考えられる。
 一方で、会内の十分な理解を得ることが難しく、部会の設立には10年の月日を要した。47年12月に府医臨時代議員会で承認され、翌年7月に設立総会が開かれた。転機となったのは、山口正民執行部への橋本顧問の理事就任だ。澤部会長は、山口会長の協力により「全国に先駆けて勤務医部会が設立した」と明かした。
 現在では府医会員の56%を勤務医が占める。若手医師に医師会や部会の活動を浸透させて、未来につなげたいと締めくくった。
 当日は、来賓として日医から松本吉郎会長をはじめ、茂松茂人、角田徹、猪口雄二・各副会長、松井道宣・京都府医師会長、平石英三・和歌山県医師会長が臨席。代表して、松本・日医会長が祝辞を披露した。
 次に同部会の発展に寄与した功労者へ高井・府医会長より感謝状が贈呈された。最後に幸原晴彦副部会長が謝辞を述べ、記念式典は閉会となった。

さらなる発展誓う

 記念パーティーは、加納康至・府医副会長、中島康夫副部会長のあいさつの後、中尾正俊・府医副会長の乾杯で開宴。関係者が50周年の節目を祝し、さらなる発展を誓った。

府医勤務医部会は全国に誇れる部会
高井会長が開会あいさつ

 大阪府医師会勤務医部会は、設立以来活発な活動を展開しており、全国に誇れる部会である。部会の発展に尽力してこられた先達をはじめとする勤務医に改めて敬意を表したい。
 また、「勤務医と開業医が団結し、医師と医療に対する国民の信頼に応える」という当時の設立趣旨は、現在にも通じている。地域医療構想や医師の働き方改革、医師の地域・診療科偏在など、課題が山積している中で、医師会が医師の代表であることを示すためには組織力の強化が必要だ。今後も一層の協力を願いたい。

記念シンポジウム
関西から発信する近未来医療

 杉本圭相副部会長と清水智之常任委員(府医理事)が座長を務め「関西から発信する近未来医療」をテーマに実施。谷口達典氏(株式会社リモハブ代表取締役/大阪大学国際医工情報センター)、森本優一氏(近畿大学病院小児科・思春期科助教)、髙橋淳氏(京都大学ⅰPS細胞研究所長)が登壇した。それぞれの講演後、松本吉郎・日医会長、澤芳樹部会長、中村祐輔氏を交えパネルディスカッションが展開された。

記念講演
松本・日医会長、中村氏がそれぞれの取り組み伝える

 澤芳樹部会長が座長を務め、まず、松本吉郎・日医会長が「勤務医に対する日本医師会の取り組み」と題して講演した。日医の組織率向上のカギは勤務医の入会だとし、今年4月より卒後5年目まで会費減免期間を延長したと報告。さらに、医療の現場に根差した地域医師会活動の充実には、勤務医の役割が一段と大きくなっていると語り、勤務医の声を反映した会務運営に努めると強調した。
 次に、医療政策が実現するまでの流れと日医が果たす役割を説示。国の審議会等に参画し、現場の意見を提言しているとした。その上で、一度政策や制度が決定すると将来にわたり医師の処遇等に影響し続けるとの持論を述べ、「勤務医も自分自身の問題として捉えてほしい」と呼びかけた。
 続いて、中村祐輔氏(医薬基盤・健康・栄養研究所理事長)が「AIとデジタルで心温まる医療を!」をテーマに自身がプログラムディレクターを務める内閣府SPI第2期「AIホスピタルプロジェクト」の目的や医療現場でのAI活用法などを伝えた。
 中村氏は、AIによって冷たく機械的な医療現場になることを懸念する声がある一方、「医療従事者の時間とゆとりを取り戻すことができる」と言及。より一層思いやりに満ちた医療が提供できると力を込めた。