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時事

「令和5年版厚生労働白書」が公表

府医ニュース

2023年8月30日 第3046号

〝つながり・支え合い〟のリフレイン

 8月1日、厚生労働省から「令和5年版厚生労働白書」が公表された。今年の第1部(テーマ編)のタイトルは、「つながり・支え合いのある地域共生社会」である。
 第1章では、①本格的な少子高齢化・人口減少時代を迎えようとしている②世帯規模の縮小化・単身世帯割合の増加などにより、家族や地域における支え合いの機能の低下が懸念される…世帯あたり人員:2.99人(1990年)→2.21人(2020年)/単身世帯割合:23.1%→38.0%(同)/結婚意思を持たない若者が増加傾向③地域での交流は、若年層や都市規模が大きいほど「挨拶」や「世間話」をする程度を望む割合が高い傾向④人間関係が希薄化する中で、孤独・孤立の問題が顕在化・深刻化…コロナ禍において、人と直接会ってコミュニケーションをとることが「減った」との回答が約70%/男性は50歳代、女性は20~30歳代で孤独感が強い者の割合が高い/女性や小中高生の自殺者数が増加――との調査結果や分析を示している。
 続く第2章においては、家族や地域のつながりが弱まり、加えて新型コロナウイルス感染症の影響により、複数の課題が重なり合い複雑化し、分野横断的な対応が求められたり、従来の対象者別の制度の狭間にある課題が表面化したと指摘している。具体的には、ひきこもり、8050問題(高齢の親と働いていない独身50代の子との同居世帯に係る問題)、ヤングケアラー、ひとり親、セルフ・ネグレクト(必要な医療・介護サービスを拒否し社会から孤立)、様々な困難を抱える女性(性的被害や暴力)などの課題を挙げている。これらは誰にでも起こりうるリスクであり、改めて自分ごととして考える必要があると訴えている。
 そして第3章では、ポストコロナの時代に求められる新たな取り組みのあり方を提示している。制度・分野ごとの縦割りや、支え手・受け手という関係を超え、制度から人を見るのではなく「その人の生活を支えるために何が必要か」という観点が大切としている。
 〝包摂的(インクルーシブ)〟を掲げ、多様な新しいチャネルを通してすべての人に「つながり・支え合い」を創出するとして▼世代や属性を超えて、様々な人が交差する居場所づくり▼属性(高齢・障害など)別から、属性を問わない支援へ▼支援の申請を待つ受動型から、能動型支援(アウトリーチ)へ▼暮らしの基盤である住まいから始まる支援▼時間や空間を超えることが可能なデジタルの活用――を示した。
 さらに、人々の意欲・能力が十分発揮できる「つながり・支え合い」の創出として、▽ライフスタイルや興味・関心に応じ、誰もが参画できる支え合いの促進▽デジタルを活用した地域コミュニティ機能の強化▽得意分野を活かし、連携した支え合いの促進――を掲げた。
 さて、第3章の本文に限っても、「つながり」の語句は実におよそ40回登場する。これだけ強調されなければならないことに、孤独・孤立の問題の深刻さがうかがえる。(学)