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時の話題

少子高齢社会⑤

府医ニュース

2023年8月30日 第3046号

加速化プランは有効か

 令和5年6月13日、「こども未来戦略会議」は、出生率を反転させることができる最後の7年間のチャンスとして、3.5兆円規模の「異次元」の少子化対策を打ち出した。具体的な財源はまだ決定されていないが、政策の骨子のみは決定された。基本スタンスは、▽多様な価値観・考え方を尊重しつつ、若い世代が希望通りに結婚し子育てできる▽結果として人口減少のトレンドが反転できたら、我が国の社会全体にも寄与。「未来への投資」として子ども・子育て政策を強化するとともに社会全体で支えるという意識の醸成が必要――。その上で次の3つの基本理念を掲げた。

(1)若い世代の所得を増やす

 若い世代の非正規雇用者の年齢別割合(3年度厚生労働省)は、男性20~24歳(33.1%)、25~29歳(13.3%)、30~34歳(11.2%)、35~39歳(8.5%)に対して、女性20~24歳(37.9%)、25~29歳(27.7%)、30~34歳(36.7%)、35~39歳(46.6%)と、女性は時間的に自由に動ける非正規雇用者が多い。しかし、非正規雇用者は、育児休業給付制度等が利用できないことが多く、収入も正規雇用者に比べて少ない。最近は夫婦共働き世帯が多く、夫婦ともに正規雇用者の家庭では十分な収入が得られるが、女性は子育てとの両立が困難である。また、パートの時給を上げても、106万円の壁、130万円の壁があり、手取りが減少しないよう補助金を支給する策が提案された。夫婦ともに産後育休に参加すれば、手取りの金額は10割補償される新たな策も提案された。

(2)社会全体の構造・意識を変える

 日本経済団体連合会の十倉雅和会長も言われたように、「男性が育児を手伝う」という感覚ではいけない。子育ては、当然夫婦の共同作業であるという認識が必要である。時短勤務にも育休給付の創設、産後期間に男女で育休取得すれば10割給付。さらに、非正規・フリーランス、自営業者の方々にも経済的支援を創設する。厚労省の調査では、4年度は男性の育児休業取得率は17.13%で過去最高であったが、7年度までに50%、12年度には85%の目標を掲げている。

(3)すべての子育て世帯を切れ目なく支援する

 「伴走型相談支援」制度で、①妊娠届け時②妊娠8カ月頃③出産後――の3回相談が受けられ、さらに10万円相当のギフトがもらえる。
 親が働いていても、家にいてもすべての子育て家庭を支援する(こども誰でも通園制度〈仮〉の創設)。あわせて、貧困、障がい・医療ケアが必要な家庭、ひとり親家庭などへの一層の支援、児童手当の拡充と所得制限撤廃、高等教育費の負担軽減、子育て世帯への住居支援などが盛り込まれた。
 以上、「異次元」か否かは色々な意見や批判も聞かれる。しかし、持続可能な財源が確保されないと絵に描いた餅になる。