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医師・医療関係者のみなさまへ

郡市区等医師会長協議会後に特別講演

府医ニュース

2023年8月16日 第3045号

「かかりつけ医機能」議論への方向性示す

 7月度郡市区等医師会長協議会(納涼)が7月20日午後、大阪市内のホテルで開催された。協議会終了後には、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」と題する特別講演も実施。また、4年ぶりに郡市区等医師会長、大阪府医師会役員による懇親会も開かれた。

 会長協議会は、栗山隆信理事の司会で開会し、高井康之会長があいさつ。府医からの報告・連絡事項が伝えられ、協議が行われた。
 その後の特別講演では、日本医師会医療政策会議で委員を務める香取照幸氏(兵庫県立大学大学院社会科学研究科経営専門職専攻特任教授)が登壇。かかりつけ医機能が発揮されるためには、制度を整える必要があるとして、具体的な方策を語った。
 まずは全世代型社会保障構築会議での審議から論点を整理。かかりつけ医・かかりつけ医機能は、「我が国の医療システム全体に関わる問題」との見方を示した。
 その一つとして日本の高齢化の現状を指摘。在宅医療・地域医療が機能しなければ医療崩壊を招くとし、「地域完結型医療」の構築を考えることが大切だと説いた。あわせて、高齢者は複数の疾患を抱えることが多く切れ目のない医療・介護サービスの重要性を強調。在宅医療・地域包括ケアネットワーク・かかりつけ医機能の「三位一体の視点」が必要になると述べた。
 日医・四病院団体協議会合同提言から、かかりつけ医機能は、「包括的・継続的健康管理」に要約できると主張。1人の医師・医療機関が担えるものではなく、システムとしてかかりつけ医機能を構築することが前提になるとした。さらに、フリーアクセスとの関連に言及。健康管理や医療サービス利用の決定を患者自身に委ねるのではなく、何らかのルールづくりが求められると加えた。

かかりつけ医機能 役割に応じた報酬を

 香取氏は、かかりつけ医機能を発揮するための制度整備にあたっては、登録制や強制的な割り当てで臨んでも機能しないと明言する。その上で、▽情報の一元化・PHR・医療DX▽かかりつけ医の選択の保障▽費用保障のあり方――を要件に挙げた。特に費用面では、かかりつけ医機能に求められる範囲は極めて広範かつ重層的であるとし、「確実に実行できる条件を整備し、費用の仕組みを検討すべき」と訴えた。

高井会長あいさつ(要旨)

 各地で豪雨による被害が報告されている。災害はいつ、どこで発生するかが分からず脅威だ。また、熱中症の増加も危惧されており、くれぐれも体調管理に注意願いたい。
 マイナンバーカードによる健康保険証利用を巡っては、様々な問題が噴出している。医療のデジタル化・DX化は避けられない情勢であるが、拙速に始めたことでトラブルが続発しており、国民の信用を失っている。これに伴って内閣の支持率も下がり、一時は早期に解散総選挙との噂もあったが、今の状況では厳しいだろう。
 財務省の発表によると、昨年は71兆円の税収があった。十分な財源が確保できているにもかかわらず、増税や社会保障抑制の議論は収まっていない。大きな問題だと考える。
 新型コロナウイルスが5類へと移行されたが、感染者数は減っておらず、大阪府医師会独自のサーベイランスでも1日2千人を超える数が報告されている。実際の感染者数はおそらくその数倍にも上るだろう。沖縄は医療逼迫の状況になっている。感染者急増に伴う重症例の増加も懸念される。新型コロナ以外にもヘルパンギーナやRSウイルスなども増えており、注視していかなければならない。
 来年のトリプル改定に向けては、日本医師会を支えていくこと、与党議員の理解を得ることが大切である。そのためには自民党員の確保が重要になる。自民党員をできるだけ増やし、日医をサポートしたい。引き続きご理解・ご協力を願いたい。

協議で意見交換
ワクチン協力金、日医通し救済を

 高井会長のあいさつに続き、加納康至副会長が6月25日に開催された「第154回日本医師会定例代議員会」の模様を報告した。
 連絡事項では、▽府医創立76周年記念行事・令和5年度健老会▽「日医最高優功賞受賞記念大阪府医師会長賞」被表彰団体推薦依頼▽5年賃金構造基本統計調査の協力依頼――などが伝えられた。
 協議では、上野豊・茨木市医師会長から、新型コロナウイルスワクチン接種促進協力金の申請に係る会員からの苦言が述べられた。本事業は、5月より市町村事業への移管に伴い、申請の基準日が日曜日から月曜日に変更されている。当該会員は、これまでの大阪府事業に準じてスケジュールを組んでいたために協力金の要件を満たせなかったという。医療機関職員の時間外・休日手当などの費用も生じており、突然の変更に不満の声が上がっているとして、日医を通じて救済を含めた対応が要請された。
 これに対して宮川松剛理事は、「基本的には市町村との交渉」と前置き。5月8日が月曜日であり、これがスタートラインになったとの見解を示した。一方で、本件は日医に伝えると引き取った。