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時の話題
府医ニュース
2023年8月2日 第3044号
我が国は、昭和47年以来50年の少子化対策の歴史があるが、有効でなかった。その対策は児童手当などの現金給付、子育て支援などの現物給付、扶養控除などの税制優遇、そして働き方改革などがある。
児童手当は、初期は低所得者の子育て負担軽減が目的のため、第3子以降を対象とした。2500円~5千円程度であった。平成元年の合計特殊出生率が1.57となり、政府は少子化対策に本腰を入れるようになった。4年からは第1子から給付対象とし、第3子以降は手厚くした。給付対象も未就学児から小学生、そして22年の旧民主党政権下、中学生にまで対象を広げ、所得制限も撤廃した。24年の自公政権下では所得制限は復活するも、児童手当を増額し中学生までを対象とした。しかし、このような経済的支援は、莫大な費用の割には、出生率への費用対効果が少ないことが実証されている。使途を把握しにくく、フランスでは第2子、第3子以降を対象としている。
出産一時金も30万円から42万円まで増額されたが、出産費用も上がり、不足の状態である。それゆえ、出生率上昇効果は少ないと考えられる。一方、育休制度や保育の充実などの子育て支援は出生率に対してプラスの効果を与えることが結論付けられている。最近は、共働き世帯が多く、男性の育休制度、短時間勤務等の働き方改革が出生率にプラスになる。育休取得率は、女性81.6%、男性12.65%(令和2年度雇用均等基本調査)であるが、これは女性が出産時に就業を継続した正規雇用者が対象となっている。現在若い世代は非正規雇用も多く、女性は出産時に退職することも散見される。雇用保険の対策である育児休業制度の対象外となるので、実際の利用率は女性43.0%、男性3.7%(3年国立社会保障・人口問題研究所調査)と低い。せっかくの育児休業制度も非正規雇用が多い現状では有効に機能していない。対象者を広げる必要がある。
児童手当(子ども手当)により、平成23年度から15歳以下の扶養控除が廃止された。現在は16歳以上の子どものみ対象となっている。フランスでは「N分N乗方式」と呼ばれる多子世帯優遇税制があり、最近日本でも話題になった。岸田政権は児童手当を高校生まで広げたが、扶養控除についてはまだ決まっていない。見直される可能性がある。
少子化の一番の原因は、晩婚化・晩産化、あるいは非婚化である。若者の多くが非正規雇用等による低所得のため、将来や子育てへの経済的な不安から、晩婚化、非婚化が増加している。児童手当、育児休業制度、出産一時金もすべて結婚した後の対策である。結婚を望んでも結婚に至らない若者も多い。自治体もマッチングアプリやお見合いイベントなどの婚活を支援しているが、日本の将来が若者にとって希望の持てるものにならないと効果がない。