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府医ニュース
2023年8月2日 第3044号
大阪府医師会は7月15日夕刻、大阪市内のホテルで医療問題研究委員会特別講演会を開催した。高井康之会長が座長を務め、武田俊彦氏(岩手医科大学医学部客員教授)が「動き出す第8次医療計画とかかりつけ医議論」をテーマに講演。府医役員や同委員会委員ら約40人が聴講した。
武田氏は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大から3年余りが経過し、コロナ禍を背景としてかかりつけ医に関する議論が本格化したと前置き。「日本の医療提供体制は機能したのか」「かかりつけ医が対応できなかった」など様々な報道があったと振り返った。
続いてイギリスのコロナ禍における医療提供体制を紹介した。GP(General Practitioner)による新型コロナの対応は、ワクチン接種は実施されていたものの、「基本的に発熱外来等は行われなかった」と解説。さらに、コロナ前後の変化として、以前から電話による診療は行われていたが、現在は電話診療が7~8割に上ると説明した。あわせて、GPとして勤務する医師の動向に言及。責任は重くなる一方で給与水準は低く、パートタイマーとして掛け持ちするケースも多いと明かした。今後の高齢化に対応していくには、多職種のスタッフの雇用が欠かせないが、全体の国家予算が増えておらず、相対的に医師の給与も下がっていると語った。武田氏は、各国で共通の課題もあるが、「自国に応じた政策を考えるべき」と主張。他国の制度の模倣に警鐘を鳴らした。
続いて、令和6年度から11年度までの第8次医療計画を詳説。今年度は各都道府県が計画作成を進めている段階で、今回の計画では「医師確保」「偏在対策」も含まれるとした。
そのほか『在宅医療の体制構築に係る指針』を引用し、医療体制構築に必要な事項として▽在宅医療において積極的役割を担う医療機関▽在宅医療に必要な連携を担う拠点――を指摘。医療体制構築の具体的な手順では「圏域の設定」を挙げた。従来の二次医療圏にこだわらず、実情に応じた設定が求められると強調。積極的役割を担う医療機関および連携拠点をその圏域内に少なくとも一つは設定することになると加えた。また、医療機関と連携拠点のネットワークをどのようにして構築していくかが今後の課題だと述べた。
次に、かかりつけ医に関する議論を解説した。日本医師会・四病院団体協議会の合同提言に触れ、「国民に一番分かりやすい定義」と言明。東京都では若い世代がどこの医療機関に受診すればいいか分からないといった相談が年間40~50万件も寄せられている状況であり、若年層を含めたかかりつけ医議論が必須だとの見方を示した。
最後に、厚生労働省はさらに先を見据えた検討を行っていると報告。「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」として、かかりつけ医機能を発揮できる観点も含め、地域医療をアップデートしていくことが重要だと結んだ。
終了後には多くの質疑があり、武田氏が丁寧に応じた。