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医師・医療関係者のみなさまへ

頭頸部外科月間に市民公開講座

府医ニュース

2023年7月26日 第3043号

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会大阪府地方部会・大阪府耳鼻咽喉科医会共催で開催

 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(村上信五理事長)は、毎年7月を「頭頸部外科月間」と定め、頭頸部がんの予防と啓発を行っている。7月2日には同学会大阪府地方部会(猪原秀典部会長)が大阪府耳鼻咽喉科医会(有賀秀治会長)と共催し、大阪市内で市民公開講座を開催。約240人が聴講した。
 猪原部会長のあいさつに続き、音在信治氏(同医会理事)が、「口とのどの仕組みと耳鼻咽喉科で診るがん」と題して講演。動画を交えて口・のどの構造や仕組みを解説した。耳鼻咽喉科領域のがんとしては、鼻・口・のどに発生するもので、「頭頸部がん」と総称すると説明。それぞれの特徴を示し、腫れや口内炎が長引く時などは、「耳鼻咽喉科を受診してほしい」と促した。
 続いて、安松隆治氏(近畿大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座主任教授)が、「もっと知ってほしい口腔がん・頭頸部がん」と題して登壇。頭頸部がんは重複がんが多く、注意が必要と訴えた。また、飲酒によるリスクや中咽頭がんではHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因とされており、予防啓発が重要だと主張。公的な検診が少ないため、進行した状態で受診することが散見されることから、早期発見・早期治療が課題とした。

生活習慣で防げるがんも

 小倉絵美子氏は、「口腔・咽頭がん患者として思うこと」を伝えた。小倉氏は大阪府内で開業する医師。昨年9月に舌がんと診断された。当時はネガティブ・ポジティブな考えが巡り、「冷静になれなかった」と振り返る。頭頸部がんは重複がんが多い。小倉氏も下咽頭・食道がんが発見された。計11カ所、手術は半年で5回に及んだ。すべて取りきれたものの、「がんは自分で作った」と自省する。過度のアルコール摂取が要因だったと告げた。一方で、早期発見できたのは「医師だった」からではなく、頭頸部がんの知識があったからだと語る。聴講者には、本日の講演で「患者力(知識)」を高めてほしいと訴えた。そして、「予防できるがんは予防する」「できてしまったがんは早期発見・治療する」ことが大事とし、気になる症状があれば医療機関を受診してほしいと結んだ。
 最後に有賀・耳鼻咽喉科医会長があいさつ。生活習慣を見直すこともがん予防には大切だと述べた。また、同医会が取り組む大阪市中央急病診療所の診療体制を概説。会員が順次出務しているとして、耳・鼻・のどの急な症状が出現した際の活用を呼びかけた。