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時事

健康保険証廃止が可決

府医ニュース

2023年6月21日 第3039号

マイナカードありきの医療DX化は間違いなく失敗する

 現在なお、マイナンバーカード(以下、マイナカード)取得は任意である。その上で、本年6月マイナカードと健康保険証の一体化(現行の健康保険証の廃止)などを盛り込んだ改正法案が成立した。そもそも政府は昨年6月の段階では、現行の保険証とマイナ保険証の「選択制」を打ち出していた。だが、唐突に河野太郎デジタル相が昨年10月、従来の健康保険証廃止を令和6年秋に行うと表明した。
 マイナンバー制度とは、バラバラだった行政サービスをマイナンバーで紐付けし利用することができるという、行政の管理部分の運用制度であった。さらに、エンドユーザーである国民側のメリットとしては、マイナンバーを使用し様々な行政サービスや個々の情報の閲覧がインターネットを介して可能となると説明されていた。国民には、すでにマイナンバー通知カードが郵送で送付済である。
 しかし、マイナカードが新たに登場、行政内だけには留まらない社会保障サービスの現場にも適応しようと動き出した。コロナ禍で疲弊した医療現場では、この物理的カードを使用することを前提とした療養担当規則の改定(オンライン資格確認の義務化)により、さらなる混乱を来した。マイナカード保険証化によって国民皆保険制度の現場でのオペレーションそのものが変容してしまったのだ。現在、医療機関ではマイナカードによる紐付けの不確かさを懸念し、従来の健康保険証の持参を呼びかけているところが多い。
 昨年5月26日、中央社会保険医療協議会では保険証廃止の方針が議論されていた。議事録を見返すと、医療者側でも賛否分かれていたようである。医療のDX化のためにはいたしかたない、との意見が医療者側、健保組合側から出た。当然、現在の混乱を見越した拙速な義務化に対する懸念もあったが、結局、マイナカードを使用することを主目的化した「オンライン資格確認システムの義務化」を目指す方針が決定した。
 遡る令和元年の中医協議事録では、日医側委員から健康保険証にQRコードを掲載、この読み取りで資格確認を保険証番号で行うことが可能との意見が出ていた。これなら健保組合側のデ
ータベースをマイナカードシステムとの紐付けのための再入力のアナログな手間もかからず、現在のような混乱も起こらなかったであろう。
 来年秋まで約400日。現行の保険証を廃止するとのことだが、例えば、全国の施設入所している高齢者の保険証化が期限までに終えるとは思えない。昨今、新聞社説や国会審議において「マイナカ
ード保険証化を延期してみては」の声が上がっている。それでも、政府は強行する姿勢を崩さない。もし仮に、マイナカード保険証化で推進者の言葉通り、医療DXの推進と利用者に多大なメリットが享受できたとしよう。それでも、それが保険証を廃止するという理由には到底ならない。保険証を廃止するメリットを誰も説明できていない。国民皆保険制度の精神に立ち返り誰一人も見落とさない、そのような提言を医師会は強く訴える時だと思う。
(葵)