
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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時事
府医ニュース
2023年6月7日 第3038号
AIはホワイトカラーの職場に多大な影響を及ぼすとの世論は、自分の住む世界の話ではないと思っていたが、最近の新聞記事はChat(チャット)GPTの話で持ちきりである。どうしても内容を知りたかったが、それが意外にも早かったのは、無料でAIと接することができたことに他ならない。政府も著作権の問題や教育への影響を解決し利用する政策を推進しつつある。当然医療政策にもAIの使用があり得る話であるため、対等な議論を展開していくためには、AIの特性を十分理解しておく必要がある。G7でも今年中に国際ルールが作成されるとのことであるが、まずAIを使って「時事」が書けるかに挑戦してみた。
私が使用したのはマイクロソフト社のBingである。AIの問題の一つに個人情報漏洩が挙げられていた。私は30年近く同社のメールサービスを利用しているため、同社への個人情報漏洩にはあまり抵抗がなかったのが取り付いた理由であり、無料という点は手軽に使えるという魅力もあったことにある。この2つの理由はどちらも生成AIを使う理由としては軽いということが分かったが、ほとんどの人は同様の感覚で使用していると思う。
前回の「時事」では医師偏在に関して執筆した。自己の検索能力の範囲での結論であったが、今回はAIを利用してその限界を超えてみる(以下AIの回答はカッコで表記)。まず、医師会の入会促進策を質問したが、それは既知の一般的項目を挙げるに留まった。そこで、初期研修から専門研修時に退会する医師が多い事実に関して、入会継続を厚生労働省にお願いできないかと質問したところ、『私には分かりません。』と断られた。そこで専門医機構にお願いできないかと質問、『専門医機構は、国民や社会に信頼される専門医制度を確立し、専門医の育成・認定およびその生涯教育を通じて、良質かつ適切な医療を提供することを目指しています。そのために、医師会と協力して、専門医の質の向上や地域医療の充実に貢献することができれば、それが見返りになるのではないでしょうか。』という曖昧な答え。これは前回の私の結論である。論理としては、特殊な領域に関して、まともな答えになっている。
次に、過疎地区と医師会との関係を聞いた。『(1)地区医師会は、地域の保育施設や学校などと連携して、医師の子どもの優先入園や学校行事への参加などの配慮を得る。地域のベビーシッターや家事代行サービスなどを紹介することも有効。(2)地域の医療機関や他職種と協力して、勤務時間や勤務形態の柔軟化や調整を行う。地域の医師同士でシフトや当直の交代制度を作る。(3)オンラインで教育・研修の機会や情報提供や、出産や育児に関する相談や悩みを共有できるネットワークやメンター制度を作る。』と答えてきた。医師の子どもの優先入園は批判が多いのではないかとたしなめると、『申し訳ございません。』と謝ってきた。さらに、医師を送り出す立場の大阪府医師会がやるべきこととして、『(1)大阪府医師会は、過疎地区の医師会と連携して、研修医の派遣先や期間、勤務条件などを事前に調整し、研修医の希望や能力に応じたマッチングを行うことが重要です。また、派遣中や派遣後も定期的にフォローアップを行い、研修医の不安や困難を解消することが必要です。(2)大阪府医師会は、過疎地区の医師会と協力して、研修医に対する育児支援やキャリア支援などのサービスを提供することが有効です。また、過疎地区で働くメリットや魅力を伝えることで、研修医のモチベーションや定着意欲を高めることも必要です。(3)大阪府医師会は、過疎地区の医師会と交流を深めることで、互いの理解や信頼を築くことが望ましいです。例えば、過疎地区の医師会に招待して講演会や勉強会などを開催したり、大阪府内の医学部や大学病院などに過疎地区の医師を招待して見学や交流を行ったりすることで、情報交換や人材育成に貢献できます。以上のように、大阪府医師会は、過疎地区に医師を派遣していく側として、過疎地区の医師会と協調しながら、研修医の派遣や支援を行うことが必要だと思います。』という回答に至っては、もっともらしい回答であるが、この結論に至るまでに、私や多くの医師会関係者が、AIと議論を重ねている可能性があるから、その学習した論理の積み重ねで、ストーリー性がある論理をAIが選択しているだけかもしれない。(晴)