
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2023年5月3日 第3035号
此花区医師会(板東博志会長)は3月1日午後、同区内で多職種連携研修会を開催した。当日は会場とオンラインでのハイブリッド形式で、同区医師会顧問の田中忠德氏(社会福祉士・行政書士・日本語教師)による講演を実施。会員や医療・介護職など68人が聴講した。
八幡曉直・同区医師会副会長が司会を務め、板東会長があいさつ。人生100年時代では、生活環境で自身の意思を表示することが重要になると強調。そのツールとして役立つのがACP(アドバンス・ケア・プランニング)であり、「元気な時から始めてほしい」と述べた。
引き続き、田中氏より、「ACP、それはいつでもACP! 繋げる安全、絆がる安心」と題する講演が行われた。はじめに遺言書がないために国庫帰属となる財産額の増加や、認知症の高齢者が特殊詐欺・悪質商法に巻き込まれている現状などが伝えられた。民法の改正で、法務局が比較的安価で遺言書を預かる制度を始めており(自筆証書遺言保管制度)、自身の意思を文書で残すことも大切な時代だとした。意思決定のプロセスでは、エンディングノートが利用しやすく、特に子どもがいない人には有効な手段と加えた。
ACPは自分の価値観を認識し、今後の人生を周囲とともに考えるもので、「話し合う過程が大事であり、いつでも行える」と説明した。あわせて、ALP(アドバンス・ライフ・プランニング)を紹介し、その中で自分が大切にしていることや人生観を交えてACPを進めていくことが求められると述べた。サービス担当者会議や退院前カンファレンスなどはACPの実践であり、本人の意思決定を「医療・介護職が支援し、社会的に孤立させないよう努めてほしい」と語った。
次いで成年後見制度を解説。同制度の一つである任意後見(移行型)では、行政へのサービス申請や財産管理のほか、死亡後の事務も依頼できるとした。一方で、法定後見のような自治体の金銭的補助が十分ではないとの課題を挙げた。最後に、大阪府の「いのち輝く人生のための『人生会議』を推進する条例」や取り組みに触れ、ACPに係る多職種が、本人の「意思決定支援者・意思代弁者」となることが重要と結んだ。
同区医師会では、「意思決定支援のためのACPガイダンス」を発刊している。希望者には無料で配布しており、ご希望の際は同区医師会までFAX(06-6462-3262)で申し込み願いたい。