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府医ニュース
2023年4月26日 第3034号
第153回日本医師会臨時代議員会(柵木充明議長〈愛知県〉/定数376名)が3月26日、日医会館で開かれた。令和5年度事業計画・予算が報告されたほか、定款・諸規程の一部改正が審議され、挙手多数で承認された。これにより、常任理事の定数が10名から14名に増員される。6月の定例代議員会で新たに4名が選出される見通しとなった。
柵木議長が定足数を確認後、議事録署名人2名(福田稠代議員〈熊本県〉・高木伸也代議員〈青森県〉)が指名された。次いで、議事運営委員会委員8名(近畿からは鈴木克司代議員〈兵庫県〉)が紹介され、臨時代議員会の幕が開けた。
松本吉郎会長は、冒頭、日医の会務運営への理解・協力に謝意を表した。トルコ・シリアで発生した大地震では、会員から7千万円超の寄附があり、AMDAを通じて支援を続けていると加えた。
会長就任後の所感として、日医の方針や活動を迅速かつ丁寧に伝えていくことの重要性を感じたと力説。2月には全国の会員に直接情報を届ける取り組みを始め、▽全世代社会保障法案における「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」▽医師会組織強化▽物価高騰への対応――を発信したと述べた。特に、かかりつけ医機能は、医療機関が自主的に医療機能を報告し、国民が適切な医療機関を選択できるよう示すとともに、それを基に地域で協議するものだと言明。「かかりつけ医」と「かかりつけ医以外の医師」を区別するものではなく、「人頭払い」「登録制」「認定」などへの懸念は払拭できており、「かかりつけ医制度にはなっていない」と強調した。 新型コロナウイルス感染症については、5類移行後も引き続き対策が必要だと言及。コロナ対応と通常医療の両立という現場の努力は適切に評価されるべきであり、医療機関への支援等を要請した結果、診療報酬の特例や病床確保料が継続されたことなどを伝えた。 医療DXの推進は、オンライン資格確認の原則義務化も踏まえて議論していくことが大切だとの見方を示した。電子処方箋発行の際の電子署名以外にも医師資格証の活用を検討していきたいと語った。
広報活動としては、クイズを交えた国民向けの動画を制作したほか、「入会方法」「医師賠償責任保険制度」「医師年金」などの内容を加えた医学生・研修医向けの動画も作成しており、組織強化の一環として、医師会への入会促進活動などでの活用を促した。
そのほか、令和6年度はトリプル改定、医療計画、介護保険事業計画、医師の働き方改革など、医療界にとって重要な1年であり、それに向けて日医の考えをしっかりと主張していくと力を込めた。
5年度事業計画および予算については角田徹副会長が報告した。経常収益(事業活動収入)は504億6395万7千円、経常費用(事業活動支出・減価償却費・引当金繰入額等)は489億3491万1千円を計上し、予算ベースで15億2904万6千円のプラスが見込まれる。
その後、藤原秀俊・財務委員会委員長(北海道)が登壇した。1月27日に開催された本委員会で事業計画案および予算案を協議。適正であることを確認し承認したと述べた。
議事に移り、角田副会長が「日医定款・諸規程一部改正」について趣旨を説明。第28条「理事29名以内」を「理事33名以内」とし、現状10名となっている常任理事の4名増員が提案された。採決の結果、出席代議員3分の2以上の賛成により可決承認された。
続いて行われた代表質問では、近畿ブロックから安東範明代議員(奈良県)②鈴木克司代議員(兵庫県)③谷口洋子代議員(京都府)が質問した。
本間博代議員(岩手県)は、代表質問で高精度のGPS等を駆使した夜間等のドクターヘリの運用を法改正も含めて求めたのに対して、細川秀一常任理事は安全性を大前提とした上で、技術革新を反映した規程整備を国へ申し入れたいとした。関連し、原徹代議員(千葉県)は、ドクターヘリの運用については自衛隊への協力要請が必要だと指摘。塚田芳久代議員(新潟県)はパイロット確保への取り組みに関して日医の考えを確認した。
こうした関連発言を受けて茂松茂人副会長(大阪府医師会理事)が答弁した。ドクターヘリに関連する令和5年度予算は87億円であり、運航費用や搭乗医師・看護師、パイロットに対する費用も計上し、充実を図っていると説明。自衛隊の協力を得るためには、各自治体の知事との連携が必要であり、今後検討していきたいと述べた。
かかりつけ医機能に関する代表質問に関連し、高井康之代議員(大阪府医師会長)が発言した。
高井代議員は、「かかりつけ医機能報告」に対する城守国斗常任理事の答弁に、「財務省・健康保険組合連合会は『かかりつけ医制度への第一歩』との認識を示している」と危機感をにじませた。また、プライマリーケアに取り組む一部の医師が「制度化を進めるべき」との意見を持っていると指摘。制度化から法制化につながる危険性を会員に周知徹底し、日医が一致団結する体制を整えることが重要と述べた。
これに対し、城守常任理事が回答。一部の医師が制度化を推進する考えを持っている点は認識しているとし、そのような医師、団体と相違点や問題点など議論を重ねながら理解を求めていきたいと答えた。
安東範明代議員(奈良県)は、今年は令和6年から始まる「第4期医療費適正化計画」策定の重要な年になると前置き。本計画の策定に向けて、リフィル処方箋の推進など警戒すべき提言が想定されるとの懸念を表明した。そのような事態に対処するため、各都道府県の保険者協議会の重要性はますます高まっていると指摘し、参画状況と日医の見解を確認。あわせて、連携強化に向けた都道府県医師会担当理事連絡協議会の開催を提言した。
これに対して、江澤和彦常任理事が答弁。医療費適正化計画は現在、第4期計画に向けた見直しが全世代社会保障法案に盛り込まれ、審議されていると述べた。さらに、懸念のリフィル処方箋については、医師の裁量に行政が介入する余地はないと言明。仮に、行政介入の動きがあれば、日医として断固反対すると強調した。また、都道府県医師会担当理事協議会については、会員の声も踏まえ、前向きに検討していきたいとした。
鈴木克司代議員(兵庫県)は、各都道府県に設置される産業保健総合支援センターおよびその管理下にある地域産業保健センターの予算が縮小され、都道府県によっては活動を休止・縮小せざるを得ない状況にあると憂慮。中小企業労働者の安全と健康を守るため、日医から政府に産業保健活動総合支援事業予算の十分な確保を働きかけてほしいと要望した。また、労働者健康安全機構に申請案件の厳正な審査を求めた。
神村裕子常任理事は、産業保健総合支援センターの予算について、令和5年度は4年度と同水準であるとの説明が厚生労働省からなされていると説示。厚労省と同機構に対しては、くれぐれも現場の士気が下がらないよう対処を求めるとともに、松本吉郎会長が直接、厚労省労働安全衛生部長に予算の確保を強く申し入れていると明かした。さらに、助成金の不正受給は同機構で調査が進められているとしつつ、日医としても厳正な対処を行うよう求めていくと加えた。
谷口洋子代議員(京都府)は、かかりつけ医機能を強化することが国民の信頼に応えることであり、診療科や開業医・勤務医にかかわらず、個々の医療機関が機能に応じた役割を果たし、地域を面で支えることが重要と指摘。かかりつけ医機能発展のため、地域包括診療加算等は対象疾患を限定せず、より多くの医療機関が算定できるよう改善すべきと提案した。その上で、すべての医師がかかりつけ医機能を発揮するためには診療報酬上の評価が必要と述べ、そのあり方や財源の配分について日医の見解を問うた。
城守国斗常任理事は、平成26年度改定で創設された地域包括診療加算・診療料は、診療報酬上の「かかりつけ医機能の一つの評価」であり、かかりつけ医機能の評価の道筋が実現できたと主張。一方で、算定できないからその医療機関がかかりつけ医機能を持っていないとは考えていないと強調した。あわせて、かかりつけ医機能を適切に評価するためには診療報酬改定の財源確保が必須であるとの考えも示した。
3月26日、第153回日本医師会臨時代議員会の傍聴に行って来た。桜は見頃であったが、あいにく一日中冷たい雨が降る日であった。私にとって8年ぶりとなる日医会館、玄関を入るとまずキャラクター「日医君」のパネルが出迎えてくれた。
代議員会は、約20分間の松本会長のあいさつで始まった。冒頭、トルコ・シリアでの大地震およびウクライナへの医療支援に対して会員から寄せられた支援金に謝辞が述べられた。内容は、かかりつけ医機能、医師会の組織力強化、2024年度のトリプル改定、医師の働き方改革、新型コロナ感染症の5類移行等多岐にわたった。会員への情報発信に力を入れていくとのこと、期待したい。
議事に移り、第1号事案で、近年、日医常勤役員の業務量が飛躍的に増大しているため、定款・諸規程を一部改正して常任理事4名の増員が必要と提案され、承認された。
代表質問は、「かかりつけ医機能」に関連するものが京都府の谷口洋子氏など全19件中3件あり、続けて行われた。関連質問も相次ぎ、最も多くの時間を費やし、関心の高さがうかがえた。
日医の説明では、かかりつけ医は地域で連携して面として機能を発揮するもので、現時点では、「人頭払い」や「登録制」、「認定制度」の懸念は払拭されたとのことである。しかし、財務省などが医療費抑制のために進めようとしているかかりつけ医の制度化への動きは今後も続く可能性があり、予断は許されない。大阪府医師会選出代議員である高井康之会長も関連質問に立ち、「すべての会員に日医の主張を周知し、医師会の団結力を発揮してほしい」と発言した。
関連質問で、「医師の働き方改革が進められているが、かかりつけ医機能として24時間365日の対応を求めようとする動きもある。医師は院長ひとりであるところが多い開業医の健康にも留意されるべきではないか」との趣旨の発言があり、会場から拍手が起こる一幕もあった。
全国から代議員が集まる場に行き、全国共通の課題がよく分かるとともに地方ごとの課題があることにも気付かされた。地方では高齢化と人口減少が進んでいるが、東京では人口が多いまま高齢化が進んでいくとの予想が印象に残った。「傍聴記」執筆の務めを果たす苦労はあるが、日医代議員会を傍聴する機会を与えられたことは、やはり良かったと思う。
日医会館の近くに江戸時代からの名園「六義園」がある。心惹かれたが、立ち寄る暇がなく帰路についた。
(瞳)