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医師・医療関係者のみなさまへ

時事

押し寄せる医療DXのうねり

府医ニュース

2023年4月5日 第3032号

デジタル技術で変容する医療

 3月8日、内閣官房医療DX推進本部より「医療DXの推進に関する工程表(骨子案)」が公表され、4月6日を期限とするパブリックコメントが開始された。デジタル技術で社会や生活の形を変える Digital Transformation がDXと表記されるのは、Transと同義のCrossがXと略されることによる(X-formation)。既存のIT用語(DT)との混同を避けたためともされる。平成30年には経済産業省から企業向けに、DX推進ガイドラインが策定されている。
 医療DXの基盤には、この4月から医療機関・薬局で原則義務化された、オンライン資格確認が位置付けられる。今後は、訪問診療・訪問看護や柔道整復師等の施術所での資格確認を構築し、マイナンバーカードのスマートフォン搭載によるスマホでの健康保険証利用の取り組みを進めて、令和6年秋の健康保険証の廃止を目指すとともに、今年度中に生活保護での資格確認を導入するとしている。
 そして、全国医療情報プラットフォームを構築すべく、電子カルテ情報の一部の共有、閲覧が可能な「電子カルテ情報共有サービス(仮称)」の構築に取り組む。当初は、3文書・6情報(診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果報告書、傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報〈救急および生活習慣病〉、処方情報)から進め、順次拡大する。救急時に速やかに閲覧できる仕組みを早急に整備し、検査結果等については、PHR(Personal Health Record)として、本人がマイナポータルを通じて確認できる仕組みも構築する。標準規格電子カルテの導入推進とあわせ、クラウドベースの標準型電子カルテの整備も行うとしている。
 技術的な事項は、すでに厚生労働省のワーキンググループ(WG)で検討が重ねられている。3月9日には、データヘルス改革に関する工程表も踏まえた、これまでの議論のとりまとめ(案)が示された。内容には、情報管理の方法(PUSH/PULL)、同意取得の考え方、各データの保存期間、患者が情報閲覧を可能とする仕組み等が含まれている。
 IT化の大きな脅威となるサイバー攻撃に対しては、3月10日に改正医療法施行規則(省令)が発出され、医療機関の管理者が遵守すべき事項に、サイバーセキュリティー確保のための必要な措置が追加された。参照すべき「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、優先的に取り組むべき事項のチェックリストを盛り込み、5月中旬に改訂の予定である。
 マイナポータルで提供される個人の医療情報に、ライフログ(歩数、運動、活動量等)や食事、睡眠データ等を連携させて健康維持・予防支援を行う民間PHRの活動も活発化しており、今年度中に「PHRサービス事業協会(仮称)」が、経済産業省と連携の下、設立される見通しである。
 他方、疾患の予防・治療・診断を行うデジタルヘルスサービスは、プログラム医療機器(SaMD: Software as a Medical Device)に分類される。こちらも政府により開発・市場投入の促進が図られている。3月24日には、診療報酬評価の方向性を議論すべく、中医協内のWGの初会合が開催された。
 この1月からの電子処方箋の導入により、診察から処方までオンラインで完結することも可能となっている。ここ数年での、大きな変化を心づもりしておかなければならないのかもしれない。(学)