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時事
府医ニュース
2023年2月22日 第3028号
令和5年2月9日に第71回厚生科学審議会感染症部会が開催された。議題「感染症等に関する新たな専門家組織の機能について」では、次の感染症危機に備えた感染症対応能力を強化するための感染症等に関する新たな専門家組織の構築が示された。まず課題として、①新型コロナウイルスは次々と変異し、専門家といえども情報収集に制約があり、その分析の詳細も公表されないことがあったことから、より深い科学的議論と説明が必要な場合があった。科学的議論を行うには、帰納的なアプローチや演繹的なアプローチに加え、説明的仮説という形で対策を前に進めるアプローチがあることに留意が必要。②危機時に情報を迅速に収集・共有・分析し活用しやすい形で公表することができる情報基盤と安心して迅速に情報を提供・共有できる環境を整備し、専門家助言組織が外部の専門家集団と連携することが必要である。専門家の役割は科学的助言にあり、判断は政治と行政が行うことが適切である。③国の方針や都道府県知事による要請について、その実効性の向上と、要請の目的と手段の合理性に関する説明を行政がより丁寧に行うことが必要。④科学的知見と根拠に基づく政策判断に資するため、政府における専門家組織を強化すること。⑤ウイルスの特性が未知あるいは変異する中で、国民の納得感や対策の効果を高める観点からも、政府がリスク・コミュニケーションの視点に立った国民への情報発信を行うこと――を示した。
対応の方向性として、司令塔である内閣総理大臣の指揮命令を徹底するため、内閣官房に新たな庁を設置するとともに、政府における平時・有時の体制、専門家組織を強化する。具体的には、医療対応、公衆衛生対応、危機対応、研究開発等の機能を一体的に運用するため、国立感染症研究所と国立研究開発法人国立国際医療研究センターを統合し、感染症に関する科学的知見の基盤・拠点となる新たな専門家組織として、いわゆる日本版CDCを創設する。すなわち、次の機能を有する新たな専門家組織を創設する。▽感染症等に関する科学的知見の基盤・拠点▽国際保健医療協力の拠点▽高度先進医療等を提供する病院をはじめ両機関が現在担っている事業等の着実な実施。新組織については、危機管理体制確保のために公権力の行使に係る業務を行わせることや、研究開発の促進等のため人事・財政などの組織運営を柔軟に行えるようにすること等を踏まえた法人形態とする方向で検討する。
新たな専門家組織の構造については、感染症に係る基礎から臨床への橋渡し・連携が行えるよう両組織の既存機能も維持しつつ、統合によるシナジーが最大限発揮できるようにする観点から構築する。このような新機構の機能(危機対応、国際協力、研究、医療提供等)を一体的・包括的に持つ組織であることから、新法人の名称は「国立健康危機管理研究機構(仮称)」とするとしている。
(中)