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時の話題
府医ニュース
2023年1月18日 第3024号
政府は、医療費抑制を目的として以前から英国のGP(general practitioner)制度を導入しようとしてきた。日本医師会は、フリーアクセスが損なわれるとして、英国式のGP制度の導入には反対してきた。
令和2年1月、日本に新型コロナウイルス感染症が確認され広がると、発熱した患者の診療所での診療が制限される事態となった。これを受けて政府は、オンライン診療とともに「かかりつけ医」に関する制度整備を強く推進するようになった。新型コロナは未知のウイルスであり、流行初期はマスク、防護服、アルコール等も不足し、検査キットや有効な薬剤もなく、主に「かかりつけ医」の役割を果たしている診療所は混乱した。お手上げ状態であったのもやむを得ないだろう。一方で、コロナ禍を経験して、診療所および病院の機能分化と役割分担の議論が進むと同時に、感染症法の改正案が4年12月2日に成立した。
「かかりつけ医」の定義としては、「かかりつけ医とは、なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師である」とされる(日医・四病院団体協議会合同提言、平成25年8月)。この提言では、「かかりつけ医機能」についても触れられている。つまり、上記に定義された「かかりつけ医」が、①患者の健康状態だけでなく、生活背景も把握し、②他の医療機関と連携して24時間体制で患者に対応し、③在宅医療を推進する――ことが、「かかりつけ医機能」と理解できる。
このように、「かかりつけ医」の定義は曖昧ではあるものの、多くの診療所の医師が「かかりつけ医」に該当している。しかし、現在のところ「かかりつけ医機能」まで有する医療機関は、それほど多くはないと思われる。
コロナ禍でこの「かかりつけ医」の認識が、患者側と医療機関側で乖離していることが明らかになった。かかりつけ患者のみワクチン接種や発熱外来を受け入れている医療機関に、「自分はかかりつけ患者と思っていたのに、拒否された」との声が寄せられた。患者は、一度でも診療を受ければかかりつけ医療機関と思うようである。医療機関側からすれば、慢性疾患等で定期的に毎月診療を受けている患者をかかりつけ患者と考えている。
4年4月の診療報酬改定では、かかりつけ医機能の明確化に向けて、「機能強化加算」が厳格化された。医療機関にとっての「かかりつけ医機能」は、「地域包括診療料・同加算」の届出と同時に、「機能強化加算」も届けることになる。医療機関側にとっては施設基準など、高いハードルが存在する。しかしながら、患者側にとって届出の有無などは関係なく、これによってかかりつけ医機能の理解が進むとは考えにくいと思われる。