TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

新年のごあいさつ

大阪府医師会長 高井 康之

府医ニュース

2023年1月4日 第3023号

社会保障の理念を問い、国民皆保険を守る

 明けましておめでとうございます。令和5年の新年を迎えるにあたり、会員の皆様には、健やかに新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。茂松茂人前会長の日本医師会執行部入りに伴い、昨年9月から会長として執務にあたっています。
 長引く新型コロナウイルスのパンデミックに加えて、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や資源・食料の供給不足に伴う世界的なインフレの波が日本にも押し寄せており、しばらく不透明な情勢が続きそうです。新型コロナウイルス感染症は、昨年夏に感染の第7波が猛威を振るい、新規感染者数は過去最高を更新しましたが、その後も流行が収まらないまま、再び感染の第8波に突入しています。感染力が強い一方、重症化リスクは低いオミクロン株の特性から、社会はウィズコロナの方向に舵が切られています。昨秋の臨時国会では、感染症法が改正され、都道府県と医療機関の間で病床や発熱外来に関する協定を結ぶことも法制化されました。弱毒化しているとはいえ、高齢者や基礎疾患のある方にとってはいまだ重症化リスクは高く、当面、2類相当から5類への見直しは時期尚早と言わざるを得ません。
 新型コロナの感染拡大は、経済や国民生活へ大きな影響を与えただけでなく、有事の医療提供体制、デジタル化の遅れ、格差の拡大など様々な社会課題を顕在化させました。こうした中で昨年6月に閣議決定された「骨太の方針2022」では、新型コロナ対策への取り組みのほか、後期高齢者に係る負担能力に応じた負担のあり方やかかりつけ医機能が発揮される制度整備、さらには医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などが明記され、昨年末に改革の方向性がまとめられています。かかりつけ医機能や医療DXについては、患者の視点に立って医療の質向上につながればよいのですが、医療費抑制のツールになるのではないかと懸念します。また、6年度は6年に一度のトリプル改定や医師の働き方改革の実施を控えるほか、第8次医療計画や第4期医療費適正化計画の開始年度でもあり、今後の審議状況を注視しなければなりません。
 新型コロナや物価高対策のための財政支出が膨張する中で、財政難を理由に給付削減と負担増を主眼とした議論になりがちですが、多少の社会経済の変動では揺らがない強固な理念の下で、社会保障を堅持するとともに、実のある国民皆保険制度を維持できるよう医師会が一つにまとまり、日医とも連携しながら全力を傾注してまいります。
 少しでも明るい医療環境を作るために頑張りますので、引き続き医師会活動にご理解ご協力いただきますようお願い申し上げます。