
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
年末恒例
府医ニュース
2022年12月28日 第3022号
コロナ禍の下、もうすぐ3年が経過します。明るい話題に事欠く昨今ですが、それでも新しい年に期待を込めて、編集委員諸氏をご紹介申し上げます。来年は卯年、兎の絵と言えば関西人にとって、高山寺の鳥獣戯画が、真っ先に頭に浮かぶのではないでしょうか? 鳥獣戯画の作者が、もし現代に生きていたら……スナップショットやインスタグラムに夢中になるのでは? と想像しました。スマホと自撮り棒を持ち歩いては、面白いシーンを撮影し喜ぶ兎の姿が目に浮かぶようです。それでは来年も大阪府医ニュースをどうぞ、ご贔屓に。
2022年7月の参院選では幾つかの新しい政党がクローズアップされた。国民が四半世紀近い自公連立政権や既存政党に倦んだ結果ともいえる。れいわ新選組、NHK党、参政党、諸派4政党の動向がネットを賑わした。その中でも別格とも言える、れいわ新選組は19年に現代表の山本太郎氏が立ち上げた中道左派政党で、この参院選の結果、8人の国会議員を擁する国政政党となった。そのうち3人は重度障害者である。重度障害者その人に直接、国会議員として活動してもらうことは、既存政党には無かった発想であったが結果、国会議事堂が重度障害者のための設備を初めて整える等、歴史的な意義は大きかった。山本太郎代表を始め、れいわ新選組の国会議員に共通するのは(常に考えているからだろう)街頭演説でも討論会でも「カンペなしで」澱みなく言葉が紡がれてゆくことであり、「どうか、私の話を聴いてください!」と訴えかけてくる真摯さである。言葉に無駄がなく、論理的かつ内容の密度が高いため、自然と聴き手は訴えに引き込まれる。大企業・労働組合、宗教団体といった組織・票田を持たず、市民ボランティアと寄付に依拠する国政政党というのも画期的なことである。その経済政策は現代貨幣理論(MMT)に基づき、教育・医療・福祉など社会保障の拡充を目指すものとされる。
NHK党は13年に立花孝志氏が創設し、目まぐるしく党名を変更した結果、現在のNHK党に落ち着いた。NHKに受信料を払わないこと(NHKのスクランブル放送化)を公約として、センセーショナルな登場をしたことは記憶に新しい。現代日本の世相を反映する「トリックスター」とでもいうべきか。今回の参院選でユーチューバーのガーシー氏が当選したことにより2人の参議院議員を擁するに至った。
参政党は20年4月に結成され、急速に知名度を上げた。結成当初、米国大統領選において「トランプ前大統領の勝利を信じ、バイデン候補の不正選挙を糾弾する」としたため、「日本版Qアノン」と揶揄されたこともあった。有機農法や米食、反ワクチン・反コロナ行動規制を謳い、一方で保守系論壇誌と同様の「天皇を中心とした国家観」を主張し、若い世代を中心にネット保守層を取り込んだ。れいわ新選組とは対極的な右派政党である。今回の参院選で1人、神谷宗幣氏が比例で当選した。
さて、この秋、立憲民主党の離脱宣言により野党共闘は終焉を迎えた。次の国政選挙までの「黄金の3年間」を、少数野党を排除する形で、与党一色の大政翼賛体制に移行するのでは、と予想する報道もみられる。これらの新政党は併せても国会の中で数%の議席を占めるに過ぎないが、来春の統一地方選挙において、どのような役割を果たし得るのか、注目したい。
(猫)
社会保険診療報酬支払基金は、2022年10月に中核審査事務センター6拠点(近畿中核事務センターは大阪に設置)、地域審査事務センター4拠点、審査事務センター分室4拠点を設置して審査事務を集約する組織改革を行った。なお、審査委員会は引き続き47都道府県に設置することから、当該委員会の補助業務を担う審査委員会事務局を各都道府県に設置した。
組織改革の実現後の審査事務センター・分室の役割は主に「電子レセプトの審査事務とその審査結果の不合理な差異の解消」であり、審査事務に携わる職員を審査事務センターに集約し、事務の定員削減を含めて効率化するとともに、一定期間経過後に一人の職員が複数都道府県のレセプトの審査事務を担当することとする。これにより、都道府県間の審査結果の違いを速やかに把握することができ、レセプトや症状詳記の内容から当該審査結果の違いの合理的な説明ができない事例について、中核審査事務センターに設置する診療科別ワーキンググループ(WG)に報告の上、WGにおいて検討・協議を行い、ブロックの審査委員長の承認を得てブロックの審査基準を統一していく。また、審査事務センター・分室では診療科ごとに組織を構成し、内科、外科、混合診療科および歯科の4区分を基本としながら、専門診療科に特化した審査事務が行える診療科別の組織体制で審査業務を実施していく。これらの取り組みにより不合理な差異が解消されることを期待したい。
(中)
1872年、鉄道が新橋―横浜間で開業。学制発布、日刊紙発行、郵便事業発足、太陽暦採用、博物館開設も相次ぎ、文明開化の汽笛一声。その後20年ほどで私設を中心に路線距離7千㌔メートル以上に。各地の有力者の尽力による。1906年「鉄道国有法」により、私設鉄道が買収され、鉄道の9割が国有化された。産業振興政策推進および軍事輸送確保が、鉄道に課せられた。大正・昭和初期に、官設鉄道は飛躍的に拡がり、第2次世界大戦に至るまでの日本の興隆を支え続けた。鉄道が輸送機関の主軸の地位を得た。大戦によって大きな痛手を負った中、「日本国有鉄道」が公共企業体として再生。戦後復興に大きな力を発揮し、高度成長期をもたらした。鉄道の黄金期に至る。新幹線の開業はその頂点といえる。
ブルートレイン、L特急など華々しい列車の登場の陰で、地方の過疎化がローカル線に赤字をもたらした。国鉄は負担に耐えられず、分割・民営化でJRとなった。開業100年を待たず、合理化の掛け声のもと、不採算ローカル線の廃止へ。東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼線は、2013年から「BRT」と呼ばれるバス路線へ。北海道留萌本線では、末端部にあたる留萌~増毛間が16年に廃止。深川~留萌間を加え、全線廃止が目前に。福島県只見線では、豪雨災害からの11年ぶりの全線開通にこぎつけた。地元自治体が復旧と維持管理を負担し、JRが列車運行を担う。住民の足である路線の廃止を避けるための上下分離方式では、利用者減少の歯止めや、観光資源の活用といった地域の努力が求められている。開業から150年、社会構造の変化、輸送システムの変遷が鉄道を大きく変えてきた。今後、どの様な姿になっていくであろうか。
医療機関の整備も、鉄道にやや遅れて始まっている。大正・昭和初期の黎明期、大戦後の復興、高度成長期へと医療機関は拡大を続けた。国民皆保険という偉業も成し遂げた。しかし、急速な高齢化社会にあって、医療・介護の切り分け、病床機能分化などは、JRへの分割・効率化に匹敵する。今後、高齢者人口減に至ると、ローカル線廃止にあたる医療再編が待っているのか。皆保険維持も険しくなっている。鉄道の変遷に、医療の将来を重ねる。
(翔)
アントニオ猪木(本名 猪木寛至)さんが2022年10月1日午前7時40分、心不全のため都内の自宅で亡くなった。79歳。心不全の原因疾患は、指定難病のトランスサイレチン型心アミロイドーシス。15年くらいから労作時の息切れを自覚、19年に同病と診断された猪木さんはメディアやユーチューブなどで自身のこの病を公表。亡くなる直前まで、自身の闘病の様子を公開し続けた。
猪木さんの病名公表と同時期(19年)、心アミロイドーシスの治療薬タファミジス(ビンダケル)も専門施設で治療導入が可能となった。難病だからと人生を諦めてはいけない、闘病生活を通じて猪木さんは最期まで患者や私達に投げかけていた。今も猪木さんのユーチューブチャンネルで、過去の様子を見ることができる(現在は当時と運営者も変わり、主に第三者による追悼イベントの宣伝動画となっている)。
プロレスラー、格闘家、政治家、そして実業家と様々な肩書きを持ち、国内外でその名声を轟かせた猪木さん。会員の中にも、猪木さんに少なからず影響を受けた方も多いだろう。以前、神奈川県の郡市区医師会報誌上で、猪木さんについて会員の先生方が熱く語り合う座談会を見たことがある。
「誰にでもいつかはお迎えがくるわけで、その時までに何のために生きるのかが重要なこと。いろんな病院の、いろんな天井とにらめっこしながら、自問自答を繰り返してきました。なぜ自分がこの世に生を受けたのか。生きながらえた自分に課せられた役割とはなんなのか。まだ結論は出ていませんが、今も答えを探し続けています」(週刊文春 21年12月9日号)。人生の旅人、アントニオ猪木。子どもの頃から今まで、私はあなたから「生きることが辛くとも諦めてはいけない」と教えていただきました。合掌。
(葵)
2022年2月24日、突然ロシア軍が隣国ウクライナに侵攻した。プーチン氏は以前から、この可能性を匂わせていたが、このタイミングでの実行は、世界中に衝撃をもたらした。当初のロシアの目論見では、戦闘は短期間に収束する見込みであったが、ウクライナ軍の士気は非常に高く、西側諸国の多くの援助等もあり、ロシア軍は苦戦を強いられることになった。戦況は徐々にロシア側が劣勢となり、現在に至っている。今後は窮地に陥ったプーチン氏が、核兵器等の使用を強行するのではないかとの懸念が広がっている。
現地は冬になっており、厳しい寒さの中で重要なインフラを攻撃されたウクライナ国民は、生活の維持に大変な困難を強いられている。国際社会は、一致してロシアに制裁を科し、ウクライナの支援に向かうべきところであるが、実際には各国の思惑が交錯し、対応が分かれている。ロシアによる資源の調達等により恩恵を受けている国は、決定的な経済制裁に消極的で、結果的にロシアを助けている。
一方、農業資源の輸出大国でもあるウクライナの窮状により、食糧危機に陥っている国は、強力な制裁を訴えている。ロシアは国連の常任理事国であり、拒否権を持っているため、国連はなすすべがなく、完全に機能不全の状態になってしまった。我が国は、ロシア、中国、北朝鮮の隣国である。今回のウクライナ侵攻は遠い国のことではなく、いつ日本が同じ状況になってもおかしくないと考えるべきである。また、今回のロシアのウクライナ侵攻は、近年のグローバル社会の流れを完全に変化させ、世界経済にも重大な混乱をもたらした。これからは、他国に頼らない経済活動を中心として、各国がそれぞれの施策を進めていく必要もあるのではないか。
今回のロシアの軍事侵攻は世界全体に大きな変化をもたらした。今後の世界情勢から目が離せない状況が、来年以降も続きそうである。我々は常に目を覚ましていて、この世界を注視し続け、適切な対策を講じていく必要がある。
(浩)
オミクロン株の進化について記事を書くつもりが、ガラパゴスのリクガメとサボテンに発展し、愛知県春日井市に行き着いた。4年前サボテンステーキという文言が目に留まり、ウェブ検索したら春日井市が出てきたので、これが初めての出会いであった。しかしステーキから想像される値段とは裏腹に、郵送料の方が高かったことを覚えている。ステーキという期待感で食べるものではないが、野菜として食べるならば、大変面白い味である。春日井市ではサボテンうどんやサラダ等、町を挙げての取り組みになっている。味は酸っぱいウリと思えば良い。植木鉢に植えると、誰でも失敗しないほど確実に根が生えてくる。水やりも適当でよく、これほど簡単に育てられる植物がなぜ街の名物として挙げる価値があるのか、そのわけが分からなかった。しかしリクガメと同様、地球が砂漠化しても野菜を確保できるという夢を持って育てたが、そのサボテンが4年で1㍍ほどの高さに育った。1年ものの新芽は柔らかく棘が少ないのだが、2~3年ものになると細かな棘が密集して硬くなり、飼い犬も噛まない代物に育った。正にサボテンは進化を遂げたのである。食べ物として育てるには、プロの技術が必要だということを初めて知った。もうサボテンはゴリゴリと、2~3カ月間水もやらず放置しておいたら、流石サボテンといえども枯れてきたのである。うちわサボテンは萎れてくると、人が頭を垂れているような格好になってくる。葉が成長とともに、ちょうどピクトグラムの人形の様になるのだ。
『お願い、助けてください』
『チクチクするから嫌なんだけど』
別にガラパゴスに生えている同種でもなく、メキシコ周辺に生息する南米に広く分布する同系統のサボテンが、食用ということで春日井市に渡っただけある。しかし初めてダーウィンとのつながりを知ったので、急いで灌水した。そしたらピクトグラムはググッと直立不動になって、とても喜んでいる表情になった。我が家のサボテンは、医師会によって命を救われたのであるが、私は難義な生き物と同居することになったのである。
(晴)
長期化するコロナ禍とウクライナ侵攻で世界的にエネルギー、食糧問題を抱える中、特に日本はそれらの低い自給率が改めて露呈し、脆弱性が浮き彫りになった。さらに急速な円安と物価高が、長年、経済産業の成長が停滞してきた社会情勢の追い打ちとなり、国力の衰退を目の当たりにした感がする。実際、日本の現状を安い国、貧しい国、後進国と批評する経済学者もいる。
国力には、人口、領土、軍事力、経済力、技術力などの要素があり、それぞれが関連し組み合わさったものとされる。さて日本の場合、人口は高齢化と減少、軍事力は周辺大国や核保有国との格差、経済力は長期停滞と、それぞれに国力を高める見通しは非常に暗い。そして、この国の誇りとしてきたはずの技術力も、基礎研究力、産業技術力の低下が深刻で、イノベーション(技術革新)の出遅れもあり、いまや主要先進国の後塵を拝している。
科学技術力の低下は、科学研究力の指標となる引用数が多い論文、つまり質の高い科学論文の数の後退で裏付けられる。2004―06年度までは世界4位であったが、その後は下落の一途で18―20年度は12位まで急落した。これが、日本の現在の国力を反映しているとも思える。
日本の科学研究力の失速は、すでに17年の英国の科学雑誌『Nature』の特集でも指摘されていた。国の研究開発費は何年もの間、横ばい状態にある。また、国立大学の法人化で国からの補助金が削減され、人件費抑制のため職位数を減らし、研究者の多くは短期契約雇用となった。さらに若者の理系離れ、博士離れ、成果主義に偏った研究予算の配分といった課題も重なる。実際、日本のノーベル賞受賞者も、口を揃えて日本の研究者の劣悪な環境を憂い、自由な発想の基礎研究への理解と支援を求めている。
このままでは、これからも後退国日本に歯止めがかからない。科学技術力の強化こそが、産業、経済の発展へと導く国力の礎となる。長期的展望にたった戦略の転換が必須である。
(誠)
かつて、健康保険証のカードに既往歴、治療歴などの医療情報が記録されているとどれほど診療に役立つかと夢想したことがあった。時は経ち、平成28年1月から国民総背番号制に基づき所有者の個人番号、顔写真が記載され電子証明書が記録されたICカード(マイナンバーカード)の交付が開始された。詳細は本紙第3019号(11月30日付)の「時事」欄を参照いただくとして、本年10月にデジタル相が唐突に2024年秋に現行の健康保険証を廃止しマイナンバーカード健康保険証に移行すると発表したことは驚きであった。カードの取得は自由意志とされている法に反し、恫喝まがい、事実上の義務化ではないかと炎上を招くに至ったのは当然と言えよう。患者の利便性や受付業務の簡便化を謳ったマイナンバーカード健康保険証、あまりに乱暴なやりかたに現場は混乱に陥っている。
また、厚生労働省から医療機関に対し、これも原則として選択自由としていたマイナンバーカードを保険証として扱えるシステム(オンライン資格確認)の導入を来年度から義務付けるとの通知がなされた。レセコン使用ではあるが、紙カルテ、紙レセプト請求、そしてマイナンバー保険証の取り扱いはできない旨のポスターを掲示している町医者としては戸惑いを隠せない。デジタル化社会への変容が我が国にとって避けて通れない道であることは重々承知しているが、スマートフォンやキャッシュレスに疎い年代が少なくない今の世情を見れば廃止宣告は唐突かつ拙速と言わざるを得ない。デジタル時代に違和感のない年代が増加するのを見据えながら説明を尽くし、ソフトランディングを模索すべきではないか。
さらに、様々な保険団体が林立する中、資格の取得、喪失、変更等、諸々の条件変更に対し速やかに対応できるのか、不安の種は尽きない。医師の立場から純粋に夢想したことが歪曲されてきているのが残念だ。
(禾)
10月31日、大阪急性期・総合医療センター(865床)で電子カルテシステムに障害が発生し、緊急以外の手術や外来診療、救急受け入れなどが中止に追い込まれた。原因はランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃で、サーバにはビットコインでの支払い要求が表示された。調査の結果、ウイルスは「フォボス」であり、同センターとネット接続している給食委託業者経由で侵入した可能性が高いとされた。同業者では、セキュリティ機器(VPN装置)のソフトウェアを更新していなかった。障害発生後に更新を行ったため、不正アクセスの通信記録が消失し、攻撃元の特定は困難となっていた。
同センターでは、稼働台数のおよそ半数にあたる約1300台が感染した。バックアップは取られていたが、環境保護や安全確認に時間を要し、10日後の11月10日になって、20台の端末で電子カルテの閲覧のみが可能になった。入力・更新はできず、検査や薬のオーダーもできない状態が続き、紙カルテの運用や目視・手作業を強いられている。システムを再構築しての完全復旧は、来年1月の予定とのことである。
昨年10月に徳島県の町立病院が攻撃されたことは今なお記憶に新しいが、その後も医療機関への攻撃は活発化しているという。直近では10月27日に静岡県の有床診療所が、12月に入ってからも、石川県の病院が被害を受けたことが報じられている。
高度な技術での暗号化を、自力で解除することは事実上不可能とされる。バックアップがなければ復旧は難しい。一般企業の被害では、ハッカー集団に金銭を支払って復元プログラムを得ているIT業者は少なくないとの指摘もある。表面化しないケースも多く、全体像はなかなか明らかにならない。
一方で、サイバーセキュリティ対策も進んだ。11月2日には、日本医師会からCEPTOAR通信(FAX版)が発出され、対策やバックアップ方法(321ルール:バックアップデータは3個作成し、外付けハードディスクやブルーレイディスクなど2種類の媒体に保存。もう一つは利用中のネットワークからアクセスできない場所への保管)、相談窓口について、周知が図られた。12月8日には、厚生労働省がセキュリティ教育支援ポータルサイトを開設している。
診療所にとっても無縁の問題ではない。予防のみならず、インシデント発生後の適切な初動と素早い復旧に向けた備えが求められている。
(学)
2022年11月8日、皆既月食が全国で観察された。
太陽と地球、月が一直線に並び、月全体が地球の本影にすっぽり入ると、赤く染まるブラッドムーンとなった。今回は、月食中の月が天王星を隠す天王星食も観望できた。天王星などの惑星食は、地球全体で見ればそれほど珍しい現象ではないが、月食と同時に起こることは稀有だ。
月食は、日食とは異なり、世界中のどの場所から見ても進行状況が同じになる、と聞いて、『キーウの月』という詩を思い出した。1955年イタリアの絵本作家ジャンニ・ロダーリ氏の作だ。今年2月ロシアのウクライナ侵攻を受けて、4月にイタリアの出版社から、絵本として出版された。収益はすべてウクライナへの寄付。この呼びかけは世界的な広がりをみせた。〝La luna di Kiev〟、日本では、内田洋子氏の訳で、8月に出版された。ウクライナの首都の呼称が、ロシア語表記のキエフからキーウへと変わったのも、ウクライナ侵攻がきっかけだ。
『キーウの月』は、今のウクライナ情勢を知らない、当時のロダーリが、見上げた月をうたう詩。「キーウの月は ローマの月のように きれいなのかな ローマと同じ月なのかな」と見上げると、「わたしはいつもわたしです!」と月は答え、世界のいろいろな場所の「空を旅しながら みんなに光をとどけます」と続く。
皆既月食中の月による惑星食。前回は、442年前の安土桃山時代だった。次は、322年後と言われている。
その頃、月に照らされた世界はどうなっているのだろうか。
(颯)
(注)日本語の惑星食は慣例的な使われ方らしく、別天体の影に隠されるのが食eclipse、別天体そのものが隠す現象は掩蔽(えんぺい)occultationだそうですが、今回は慣例通り「食」を用いました。
今年4月、文部科学省は「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」という通知を出した。特別支援学級に在籍する児童生徒は授業時間の半分以上を支援学級で学ぶよう求める内容である。この通知が、大阪府の小中学校および来年度小学校に入学する子ども達が在籍する幼稚園・保育所において波紋を呼んでいる。
大阪府ではほとんどの自治体で、長年、何らかの障害を持ち支援学級に在籍している児童生徒も多くの時間を通常学級で学ぶ形が取られてきた。その子どもに支援が必要な場合は、支援学級の担任などが通常学級に「入り込み」指導をし、一部の教科については「取り出し」て支援学級で授業を受ける。この方式は、現在世界的な流れとなっている、障害のある子もない子もともに学ぶ「インクルーシブ教育」を先取りしたものとも言われてきた。今回の文科省の通知はこの流れに逆行するのではないかという困惑が現場に生じている。また、保護者は支援学級、通常学級のどちらを選べば良いか悩んでいる。
今年9月、国連障害者権利委員会は、審査の結果、日本の特別支援教育のやり方はインクルーシブ教育に反するとし、この文科省通知にも撤回を要請した。
文科省は今回の通知は、個々の障害に合わせた適切な教育が受けられるようにするもので、インクルーシブ教育に逆行するものではないとしている。
学校医としてこの問題の行方に今後も関心を持っていきたい。(瞳)
令和4年7月8日、安倍晋三元首相が奈良市で遊説中銃撃され、亡くなった。当初、多くの国民がその理不尽な暗殺に憤り、彼の死を悼む気持ちや声が寄せられた。岸田文雄首相は参院選大勝の自信から、野党の意見も聞かず早々に独断で国葬を決定した。しかし、容疑者の母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者で、多額の寄付により貧困、家庭崩壊、兄の自殺等が報じられると、多くの2世信者や家族から同様の苦情やトラブルが報じられた。その後次第に国葬への批判が高まり9月18日毎日新聞社の調査では、賛成わずか27%、反対62%となった。賛成反対双方のデモの中、武道館には4183人の参列者、九段坂公園の一般献花台には約2万3千人が献花し、無事終了した。
容疑者は、昨年9月の世界平和統一家庭連合の大規模イベントでの安倍氏の演説を見て、殺意を抱いたと供述している。政治的な背景も疑われたが、本人の供述は同団体への恨みからだという。あまりにも短絡的で、決して許されない凶行であるが、世間からは減刑への嘆願書まで募られている。むしろ、この事件を機に同団体の霊感商法、カルト宗教がクローズアップされた。
国葬令は、大正15年に大正天皇崩御を想定して勅令で制定された。戦後の新憲法下、天皇は象徴となり、旧憲法の法律は昭和22年12月31日に自然失効となった。今回は国の儀式開催を規定した内閣府設置法を法的根拠とした。42年の吉田茂元首相の国葬(佐藤栄作首相が主導)は、国民も喪に服し、共産党以外大きな反対はなかった。国民がコロナ禍で生活に困窮している中、すべて国費の国葬ではなく、合同葬にするべきだったと私は思う。岸田首相は国葬後にそのルール作り、基準策定を指示している。安倍氏は功罪相半ばする政治家であり、再検証が必要である。
世界平和統一家庭連合の宗教法人解散命令が請求できるか注目されている。今まで解散命令が出されたのはオウム真理教(平成8年)、明覚寺(14年)の二つである。いずれも代表者が刑事罰を受けていることが根拠となっている。岸田首相は10月18日には宗教法人の解散命令請求の要件に「民法の不法行為は入らない」と発言したが、翌19日には「入る」と訂正した。現在、民事で2件の教団の組織的な不法行為と20件の使用者責任を認めた事案がある。文部科学省外局の文化庁が「質問権」を行使することになる。信教の自由からいろいろ制約があり十分な聞き取りができるか分からない。今までの裁判判決の内容の確認と教団の言い分を念のため聞くことになるのでは。毎日新聞の10月22日、23日の全国世論調査では「解散請求すべき」が82%で、「請求の必要はない」の9%を大きく上回っている。
日本には宗教年鑑(令和3年版)によれば約18万544の宗教法人団体がある。宗教には寄付がつきもので、多少のトラブルはあるが、ある弁護士によれば同団体の被害者は1300人を超え、類を見ない。非常に特殊な団体と考えられ、解散命令請求が信教の自由を損なうものではない。さらに2世信者への宗教虐待の救済策が求められる。(平)