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時事
府医ニュース
2022年9月21日 第3012号
社会保険診療報酬支払基金は、8月に電子レセプトの普及を踏まえてICTを最大限に活用することにより、審査事務の効率化・高度化を進めるとともに、審査結果の不合理な差異解消の取り組みを充実させるため、全国統一的な業務実施体制への転換を図ることを踏まえ、進めてきた改革の取り組み状況を説明した。
令和3年9月から稼働した審査支払新システム(新システム)の構築にはモジュール化に加え、クラウド化および支部業務サーバーの本部一元化により、ベンダーロックイン要因等を排除し、コスト面においても経費の削減を図っている。新システムにはAIによるレセプト振分機能を実装し、過去の審査結果に基づき、人による審査を必要とするレセプトは概ね2割を維持している。新システム稼働後に新たな学習データで、3回の更新を行っている。今後も定期的に更新を行うことで振分精度の精緻化を図り、4年10月には人による審査を必要とするレセプトを全体の1.5割、5年9月には1割を目指すこととしている。
既存のコンピューターチェックルールについては、審査における不合理な差異を解消することを目的として見直しを行い、段階的に整理を進めて、3年9月に本部ルールへの集約または廃止を完了するとともに、平成30年10月以降に登録された新規事例についても4年3月までにすべての整理を完了した。
審査の差異の可視化ついては、3年9月からレポーティングを開始し、4年5月末までに検証結果を公表した。「取り扱いと異なる審査」を確認した事例について、職員起因による差異がみられる場合は、上司による教育、審査委員起因による場合は、審査委員長等から周知することにより速やかに是正を図り、1年後に改善状況の検証結果を公表することとしている。
原審査時にコンピューターチェックがなく、保険者再審査や職員の疑義で査定となった診療行為等については、査定につながる可能性の高い条件を見いだし、統一的・客観的なコンピューターチェックを拡充する取り組みを進めてきた。
保険医療機関等において請求前の段階でレセプトのエラーを修正する仕組みであるASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)機能については、新システム稼働時に、534事例について拡充を行った。
審査事務集約後の審査事務センター・分室においては、診療科別の組織を構成し、職員が複数の都道府県のレセプト審査事務を担当することで、都道府県間の審査結果の違いを速やかに把握し、大阪府等の6カ所に設置する中核審査事務センター内の診療科別ワーキンググループに報告の上、調整することとしている。現在は、3年3月に厚生労働省、支払基金および国保中央会の連名で出された「審査結果の不合理な差異の解消に向けた工程表」に基づき、審査事務集約に向け、支部取決事項について統一・集約の方向で検討を行っている。さらに、業務棚卸しなどによる効率化の推進、審査事務集約の実施に係る人事の方針等と人員体制のスリム化および事務所の有効活用についても説明した。
公正・中立な審査により日本の医療制度を支える審査支払の専門機関として医療機関や保険者から信頼される「新生支払基金」を発展させるため、医師会としても支払基金の業務を十分に遂行できる優秀な審査委員を推薦することが必要である。
(中)