「丁寧な説明」より「徹底した排膿」を

　７月８日の安倍晋三元首相狙撃事件は、この国の様々な問題を一挙に露呈させたが、とりわけ旧統一教会の「政界への浸透」ぶりは知るほどに、おぞましさの募るものであった。
　１９９０年代、統一教会の霊感商法や合同結婚式等は連日、あらゆる媒体が競うように報道していたが、次第にその名を聴かなくなった。その悪辣な「布教」ぶりが周知された結果、消滅したのだろうと小筆は思い込んでいたのだが、そうではなかった。世界平和統一家庭連合に名称を変え、消滅どころか、さらに教勢を増していた。
　グーグル・マップで検索すると、驚くほど多くの統一教会支部があることを知らされる。何らかの不幸な体験から精神的に弱っている人に照準を定めて洗脳し、資産を吸い上げ尽くす。邪魔されぬよう家族を分断し、挙句には自己破産方法や生活保護受給まで指導していたという。狙撃犯の背景が報じられるにつれ、信者２世３世の苦境が知られるようになったが、蓄えを失った１世信者も生活に困窮し、多くが悲惨な老後を送っているという。
　故安倍元首相は、財務省の決裁文書の改竄（かいざん）問題で「しっかりと調査を徹底し、全容を明らかにし、膿を出し切り、その上で二度とこうしたことが起こらないように組織を立て直していきたいと思っています」と述べたが、至言である。（猫）