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医師・医療関係者のみなさまへ

新型コロナウイルス感染症院内感染予防研修

府医ニュース

2022年8月3日 第3008号

診療所の感染予防策を示す

 大阪府医師会は6月22日午後、「新型コロナウイルス感染症院内感染予防研修」を開催。本研修は大阪府の委託事業で「医療従事者を対象に新型コロナの院内感染予防の最新知識を提供し、適切な医療の提供につなげること」を目的としている。今年度は新型コロナ感染防止のため聴講者を入れず、府医ホームページで動画を掲載している。
 当日は、前川たかし理事が司会を務め、忽那賢志氏(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学教授)が「COVID―19現状と今後の対策」と題して講演した。最初に、新型コロナウイルスの特徴や感染経路などを詳説。オミクロン株は、ウイルス表面にあるスパイクタンパクという突起物の構造が変質し、細胞表面のACE2受容体にはまりやすく、感染力が増したと説示。抗体カクテル療法やモノクローナル抗体治療の有効性、mRNAワクチンの効果も低いとの見解を示した。また、唾液中にはウイルス量が多く、無症状でもマスクは必要とし、エアロゾル発生抑制に部屋の換気を促した。
 新型コロナはSARS・MERSに比べて致死率は低いものの、世界で約5億4千万人(6月22日現在)が感染し、社会に影響を与える規模としては、100年に1度の流行だと強調(上表)。6月22日現在、感染者・死亡者ともに減少傾向ではあるが、今後も注意は必要と述べた。なお、2月時点の米国全土の血液検査「Nタンパク質IgG抗体」の陽性率は57.7%で、過半数がコロナに感染しているとみられるが日本は同時期に5%未満であったとした。
 オミクロン株の潜伏期は約3日で、従来株(約5日)より感染サイクルが早く、ワクチン接種や過去の感染免疫も十分に通用しないと明言。重症化率・入院リスクは低い傾向であるが、約8割の国民がワクチンを2回接種していたことも考慮する必要があると加えた。4回目接種については、医療従事者を対象に行った研究では3回接種者と比して十分な「感染予防」効果は得られず、「重症化予防」として位置付けた。

治療薬の留意点

 続けて、コロナ治療における抗体点滴薬・経口薬について、発症からの適用日数や投与量等、効果などを解説。発症時期や重症度によって治療薬を選択することが重要であるが、薬物相互作用も確認する必要があると注意を促した。
 さらに、診療所における感染対策について、6月20日付の厚生労働省の事務連絡「効果的かつ負担の少ない医療現場における感染対策について」に示す提言を紹介した。接触感染による伝播は低いことから、①換気②距離③時間④マスク――の徹底が効果的と説明。感染者との接触にはサージカルマスク着用を基本として、身体密着や体液などを浴びる可能性が低い場合は、ガウン等の使用は必要ないとし、外来では、インフルエンザ流行期に準じた対応を教示した。結びに、第6波の新規感染者数は減少しているものの、完全には防ぎきれないとして、外来感染対策向上加算などの枠組みも活用しながら医療現場での対応を求めた。