TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

勤務医部会第8~11ブロック合同懇談会

府医ニュース

2022年5月25日 第3001号

勤務医部会活動報告
新型コロナが及ぼす精神神経領域への影響

 大阪府医師会勤務医部会では、郡市区等医師会および勤務医部会ブロック委員が意見を交換し、相互理解を深めるため、ブロック合同懇談会を毎年開催している。令和3年度は昨年に引き続き、各ブロックで個別にテーマを選定することとし、第8~11ブロック(大阪市北部、西部、東部、南部)では、「コロナウイルス感染症の精神神経領域に及ぼす影響」をテーマに選定。新型コロナウイルス感染対策として座学・ウェブでのハイブリッド形式で3月17日夕刻に開催し、約30人が視聴した。
 当日は、高橋励氏(日本生命病院神経科・精神科部長)が座長を務め、畑真弘氏(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室助教)が「精神科医から見たコロナ後遺症」と題して講演を行った。
 畑氏はまず、世界・大阪のCOVID―19の拡大状況を概説した上で、治療後半年を経過しても何らかの症状が残っている人が10%程存在すると指摘。また、COVID―19に感染すると、症状が改善してもメンタルヘルス疾患の罹患率が1.5倍、入院患者の同罹患率は3倍になるとするアメリカの研究結果を紹介した。さらに、厚生労働省発行の「COVID―19診療の手引き」において後遺症が現れた患者が「不安が募るとさらに持続・悪化する」という記述に触れ、後遺症にはメンタル面の要素が大きいのではないかと述べた。
 最後に、治療の一つとして、漢方薬のアプローチについて解説。西洋医学での対応は、鎮痛薬や抗不安薬、睡眠薬などの投与に限定され、根本的な解決につながらないことが多いのが現状であり、「補中益気湯」などの漢方薬を用いたアプローチが試みられていると結んだ。
 続いて、夏目誠氏(読売テレビ、毎日放送、産経新聞・産業医)が「事例から学べる『うつ状態』への対応、あぁ実感!」と題して講演を行った。夏目氏はまず、「うつ状態」の診断書が増加していることに触れ、「うつ状態」は「状態名」であることから、「うつ病」「適応障がい」「発達障がい」等をしっかり鑑別することが重要であると説明した。
 次いで、事例を基に診断書への対応を語った。問題点として、精神科医と産業医や人事労務担当者において「診断書」への意識が大きく乖離していることを挙げた。精神科医は少ない診察数で診断書を出す必要があるため「状態名」で診断書を書くことが多いが、会社側としては診断書が出た時点で「状態名」を「病名」と認識し、重要な資料として判断することがあると注意を促した。
 加えて、事例から「大人の発達障がい」について説示。精神科医の杉山登志郎氏が「発達凸凹+適応困難=発達障がい」という図式を提示していることを解説し、発達障がいの「特性度」が高く、「環境」の問題で日常生活に支障を来す場合を「障がい」とみなす一方で、環境次第ではむしろ好影響を及ぼすこともあると説いた。
 最後に、主治医と産業医・看護師の連携に触れ、産業医の98%が嘱託契約であり、内科医であることから、病名の正確な伝達(「うつ病」「うつ状態」の違い等)を行うなど連携体制の構築が重要と締めくくった。