
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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時事
府医ニュース
2022年5月25日 第3001号
第4次産業革命が我々の生活に変化を及ぼしていることは知りつつも、学会の開催方法が変わった程度でしかなった。しかしウクライナ侵攻のニュースを見るにつけ、戦術が激変している現実に、世の中がAIを中心とした大きな波に飲み込まれていく衝撃を感じるのである。AIが勢力を広げる世界動向の下、日本内科学会総会では医療AIに関するシンポジウムが開催された。我々は問診から診断、そして治療まですべてやってくれるロボット医療は望んでおらず、そんな自己否定はまっぴら御免である。すでにAIが凌駕している囲碁や将棋の世界では、「AIはAI」「人は人」という線引きができている。AI開発は当初膨大な資金投資である程度発展しても、その後は社会的ニーズにより持続させる必要がある。AIは生命の進化と同じように独力では動けないし、周囲の環境が決定的な影響を与える。今年の内科学会総会で発表されたAIの動向は、微妙な変化が感じられた。
現在のAI診療機器の開発は、自動運転車とほとんど同じ進行度と言って良い。自動車にしろ医療AI機器にしろ、製品化後に人命を預かる重大な社会責任を持つ領域で、慎重論が飛び交うのは当然である。患者の受診から治療まですべてAIが対応する「AIホスピタル」は、自動車でいうと自動運転レベル5に相当する。中国では証明写真ボックスのような無人診療所が、医療過疎地域で稼働していることが紹介された。簡単な自動診断での投薬が可能で、複雑な病気であれば遠隔診療が行われるそうである。このようなAI診療所の登場は、広大な中国のお家事情があり、日本で認可される可能性は低いが、在宅診療に応用できそうなアイデアはある。自動車の場合、完全自動型の開発はメーカーとして社会的ステータスになるが、逆に事故が起こった場合、膨大なリコールや製品買い控えなど、甚大なリスクを負うため、完全自動型を強調するよりも、自動ブレーキや高齢者運転支援などの派生技術の実用化で、完全に信頼がおけるAIが登場する未来につないでいく現状にある。このようなAIホスピタル最前線を、慶應義塾大学放射線科学の陣崎雅弘教授が発表された。
4年間の研究の中で、最初に院内AI担当委員を選出しボトムアップ体制を構築した。またAI使用を①単純作業②高度医療支援③人ができない作業――に分類し、単純作業に含まれる問診では、今日の治療指針などをベースにAIが行い、雑音や方言に阻まれつつも9割程度の聴取が可能となっている。また、スマートフォンに検査データのダウンロードが行えるように工夫したほか、データの可視化領域では、パネル化した病床や手術予定の動きが一目で分かるように提示し、AIで管理効率を上げている。感染や放射線被曝の危険がある領域では、ロボットを使った案内で医療者の安全を守った。特に強調されていたのは、可愛らしい病院案内ロボットや、足の不自由な患者を目的科まで輸送する電動車椅子が大好評で、商品化レベルまで話が進んでいることが紹介された。
数年前我々がイメージするAIホスピタルは「電子頭脳」という漢字が表すイメージを持ちがちであったが、最近は「鉄腕アトム」や「ガンダム」という言葉の感覚に置き換わってきている。冒頭、東京大学の大江和彦教授の講演の中で「デジタルツインな医療を支えるAI」という題名で、仮想と現実を結び付け、リアルタイムシミュレーションで患者の状態予測する源流として、アポロ計画を提示されていた。私が思春期の頃よりすでにAIが使われていた歴史があり、言葉に対する概念の変化を感じた。
もう一つの提示は、日本の画像技術がAIで磨きがかかった事例であった。日本医学放射線学会では、J―MID(Japan Medical Image Database)により、全国から画像と診断情報を集中統合化することにより、診断技術を飛躍的に発展させたことを順天堂大学の明石敏昭准教授が発表された。AIの活用により開発された画像診断医療機器は、今後内視鏡やCT、MRIに実装されていく計画である。
このほか、アップルウォッチなどの健康AI機器が爆発的に開発されている現状も紹介され、オンライン診療などで遠隔的な聴診やバイタル管理を行うベッドサイドAIを設置すれば、今後在宅診療が大きく変化していくことが予想される。
技術は常に変化していくだけに、ロボット医師よりも診療支援ツールという議論は今後も必要である。(晴)